藤井六段、師匠撃破!互いに手の内知り尽くし…千日手の激戦制す

[ 2018年3月9日 05:30 ]

<王将戦1次予選2回戦>杉本七段(右)との師弟対決に勝ち、感想戦を終え、深々と頭を下げる藤井六段
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 将棋の中学生棋士、藤井聡太六段(15)が8日、大阪市・関西将棋会館で指された第68期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)1次予選2回戦で、師匠の杉本昌隆七段(49)と対戦した。公式戦で初めての師弟対決。千日手による指し直しという激戦を111手で制して公式戦14連勝とし、恩人に大きく成長した姿を見せた。

 杉本が投了の意思を示した直後、藤井はこれまでの感謝の気持ちを込めるかのように、盤につきそうになるほど深々と頭を下げた。「公式戦で対戦ができてうれしい。とてもいい経験になった」。最年少プロ棋士、最多連勝、最年少棋戦優勝など数々の新記録を打ち立ててきた天才は“恩返し”を果たせた喜びを静かにかみしめた。

 開局前から対局場にはピリピリムードが漂っていた。互いに相手の方を時折チラッとは見るものの、視線は決して合わせない。師匠と弟子ではなく、勝負に懸けるプロ棋士同士のプライドの火花が盤を挟んで散っていた。

 午前10時開始の対局は午後1時18分、互いの「負けたくない」という意地がぶつかり、59手目でまさかの千日手に。指し直し局では自身の原点という戦型「四間飛車」で仕掛けてきた師匠の攻めを「居飛車穴熊」でがっちり受け止めた。対局後「(練習対局で)あまり(四間飛車を)してこなかったよね?」と杉本に優しく語りかけられた藤井は、ようやく緊張感から解放されたようにニッコリとうなずいた。

 2人の出会いは藤井が小学1年の時。小さな子供が感想戦で大局観を語る姿に杉本は衝撃を覚えた。4年生で入門した藤井の才能と勝利への執念を早くから見抜いた杉本は、型にはめないよう指し手の指導は最小限に。兄弟子らと対局を重ねる藤井の横で、杉本はアドバイス役に徹した。棋風が違う師匠の考えにとらわれず、将棋にのめり込むことができた藤井は周囲の期待以上の急成長を遂げた。

 「奨励会時代にたくさん教えていただいて…。これからも活躍していかねばと思う」と藤井。さらなる恩返しのために、タイトル奪取への決意をにじませた。

 ▽千日手 盤面、両者の持ち駒、手番が全て同じ局面が4度出現した場合、その勝負は無効に。休憩後、先手と後手を入れ替えて指し直しとなる。それまでの消費時間は原則として引き継がれる。公式戦で藤井は昨年6月の澤田真吾六段(26)戦、8月の豊島八段戦(ともに棋王戦)で経験。指し直し局で澤田戦は勝って公式戦連勝を20に伸ばしたが、豊島戦は敗れている。

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