羽生永世7冠 国民栄誉賞正式決定 謙虚に進む“王さんの道”

[ 2018年1月6日 05:30 ]

国民栄誉賞受賞が正式に決まり、花束を贈られた羽生永世七冠は笑顔でガッツポーズする
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 安倍晋三首相は5日、将棋界史上初の永世7冠を成し遂げた羽生善治(47)、囲碁で初めて7冠独占を2度果たした井山裕太(28)両棋士に国民栄誉賞を同時授与することを決め、菅義偉官房長官が閣議に報告した。都内で会見した羽生は同賞について「最初に思いつくのがプロ野球の王貞治さん。自分が頂けるとは夢にも思っていなかった」と喜びを語った。授与式は2月13日に官邸で行われる。

 将棋界の英雄は穏やかな笑みを絶やさない。渋谷区の将棋会館で行われた記者会見。静かにつむぎ出したのは「私個人の活動というより、将棋の伝統的な世界における歴史の積み重ねも評価して頂けたのではと思っています」という発言だ。賞の重みを感じながらも、自身を育ててくれた環境に配慮する。さりげない言葉の端々に飾らない人柄がにじみ出ていた。

 夢のような瞬間だった。「国民栄誉賞について、一番最初にイメージするのは…やはり野球の王選手ですか」と“世界のホームラン王”の名前を挙げた。時は1977年9月3日。巨人のユニホームに身を包んだ背番号1が通算756号本塁打となる当時の世界新記録をマークした年。国民栄誉賞第1号として、いまだに人々の心に刻まれている大偉業だ。

 当時7歳の羽生は同級生から将棋を教わったばかりの超初心者にすぎなかった。「(本塁打記録が)非常に騒がれていた時期でしたね」。自身は翌78年から八王子将棋クラブに通いだし、やがて無敵の少年として名をはせる存在になる。新たな伝説を築き上げる原点が、あのカクテル光線に照らされたアーチと時期的に重なっていたとは。「まさか自分がそういう賞を頂けることになるとは夢にも思わなかった」と、不思議な縁に思いを投げかけた。

 藤井聡太四段(15)を筆頭に若手の台頭に沸く将棋界。羽生は15歳でプロデビュー。通算1391勝を挙げ、歴代1位の故大山康晴十五世名人の1433勝に迫っているが、ここ2年で3つのタイトルを20代棋士に奪われた。だが「ただ経験を積めばいい、ただ若さがあればいいということではなく、総合力が問われる競技。自分自身も棋士としてファンの皆さんに伝えていきたい」と、戦う姿勢を改めて強調した。

 ◆羽生 善治(はぶ・よしはる)1970年(昭45)9月27日、埼玉県所沢市生まれの47歳。82年6級で故二上達也九段門下となり、85年四段昇格。89年に竜王戦で初タイトル獲得。96年に史上初の全7冠制覇。昨年12月5日には竜王を奪取し、初の「永世7冠」を達成。獲得タイトルは竜王7、名人9、王位18、王座24、棋王13、王将12、棋聖16の計99期。ほかNHK杯戦など棋戦優勝は44回。

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