森友問題で気になった1強政権と「忖度政治」

[ 2017年4月5日 08:30 ]

学園理事長を退任した籠池泰典氏
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 【小池聡の今日も手探り】「忖度(そんたく)」。ご存じ、森友問題で頻繁に登場しているキーワードの1つだ。その意味は「他人の気持ちを推し量ること」。早くも「今年の流行語大賞」との声も挙がっているが、永田町で「忖度」と言えば、ついつい「忖度政治」を思い浮かべてしまう。「剛腕」「壊し屋」と言われた小沢一郎衆院議員の心中をおもんぱかって周辺議員らが動く状況を指して使われたのが記憶に新しい。

 そのうちの1つが、鳩山政権時代の2010年3月に起きた民主党副幹事長の解任騒動。小沢氏が幹事長を務めていた党執行部への批判を副幹事長が繰り返していたことから、小沢氏の求心力低下を懸念した側近らが画策したものだった。「言論封殺」などと批判を招いた「忖度政治」の一例。党内基盤強化を目指す動きとして「純化路線」なる言葉もたびたび話題に上がった。最終的に党分裂という事態を招いた。

 さて、学校法人「森友学園」(大阪市)を舞台にした「忖度論争」。開校を目指した小学校をめぐり、学園側が利用した「安倍晋三記念小学校」「安倍昭恵名誉校長」。格安での国有地払い下げに際し財務省などの忖度があったのかどうか、いまだ決着は付いていない。

 学園理事長を退任した籠池泰典氏について、国会への参考人招致を拒んできた自民党は一転して証人喚問にかじを切った。それより前に籠池氏は「昭恵夫人を通じて安倍首相から100万円の寄付を受けた」などと主張。これに対し同党の竹下亘国会対策委員長は「総理に対する侮辱」と発言、方針転換の理由の1つとされた。「異論を唱えにくい空気が支配」とも評される安倍1強時代。「侮辱」発言、それに続く証人喚問実現は忖度の類だったのだろうか。

 喚問での証言について会見で「偽証の疑いがある」と告発にも言及した自民党議員に対して、籠池氏の代理人弁護士は「法的根拠を欠く」などとして撤回を要求する抗議書を送付。刑事告訴や民事での提訴をにおわすかのような「名誉毀損(きそん)」との文言も使われた。自民党議員は即座に反論。問題の裾野はさらなる拡大を見せている。

 着地点がなかなか見通せない中、ふと考えてしまう。1強政権の下で「忖度政治」が横行し始めれば、ブレーキは誰がかけるのだろうか、と。世知辛い世の中で「忖度疲れ」にさいなまれることもあるだろうが、時の政権が何をしようとしているのか、「推し量る」ことを忘れてはならないと思う。(編集委員)

 ◆小池 聡(こいけ・さとる)1965年、東京都生まれ。89年、スポニチ入社。文化社会部所属。趣味は釣り。10数年前にデスク業務に就いた際、日帰り釣行が厳しくなった渓流でのフライフィッシングから海のルアー釣りに転向。基本は岸からターゲットを狙う「陸(おか)っぱり」。

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