時代考証家は体力勝負…重責、多忙も苦じゃない「15歳からの夢だもの」

[ 2015年5月24日 10:00 ]

TBSドラマ「天皇の料理番」で時代考証を務める山田順子氏
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 テレビ・映画の歴史劇を制作する上で、欠かせない存在となるのが時代考証家。その中身が史実として適性なものか否か…。TBSテレビ60周年特別企画・日曜劇場「天皇の料理番」(日曜後9・00)で、その検証を担当しているのが山田順子氏だ。

 「歴史的事実が間違っていないか見るのは当たり前で、セリフについてこの時代にこんなしゃべり方しないよとか、この人とこの人の出会い方はないんじゃないとか指摘したり」。台本を作る前の仮本の段階から言葉の言い回しなどを確認し、事前にロケ地に入って建物、美術様式などもチェックする。「その時代にふさわしいのか。映ってはいけないものはないか、あれば隠して加工してもらったり。スタッフとやりとりが直接できるから、現場に入るようにしているの」。

 ほぼ100%ロケに付き合う。ある時は気温マイナス10度の山梨・忍野八海。ある時は「冷凍庫状態」の福島の大内宿へ赴き、撮影が滞りなく行われるよう雪かきを手伝う。指導やチェックのため朝5時に現場に入ることも多い。通常は「机の上や会議室で行われる」文化系の時代考証。山田氏の場合は、もはや体力勝負の体育会系だ。

 祖父、父親と2代続いて歯科医だが、山田氏は15歳にはこの仕事に就くことを決めていたという。「民間放送開始の翌日に生まれて、NHKの大河ドラマが始まった年に家にテレビがやって来た。時代劇を見て育ったせいか、それを作りたいと思ったのがきっかけ」。大学卒業後、さらに歴史の勉強を続けることも考えたが「私はテレビの子だから」とCM制作会社に就職。その後、放送作家として歴史クイズを手掛けたことを機にテレビの時代劇で活躍するようになった。

 少ない撮影休みの日。朝早くから今後の撮影で使用する建物・美術様式の確認。午後に帰京して取材を受け、そして翌日からまた現場に入る。暑さ寒さ、時間も関係ない。それでも「ちっとも苦じゃない。国家事業の内幕を扱う大きな仕事は最初で最後だと思うしね」ときっぱり。なぜなら「15歳の時から夢見ていた仕事だもの。楽しいことばかり」と少女のようにコロコロと笑う。

 「いつも体調を万全にしています」と、気を付けているのはドラマ内の史実だけでなく自身の健康管理だ。「倒れたら現場には行けない。自分がいない時のクオリティーが、私の中で納得できなくなる。だから健康でいなくちゃ」。穏やかな表情の中に刻まれていたのは、自信と矜持だった。

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