「天皇の料理番」1年前の企画変更で誕生 時代の空気に“直感”

[ 2015年5月3日 09:40 ]

TBSテレビ60周年特別企画・日曜劇場「天皇の料理番」第2話の1場面(左から小林薫、佐藤健)(C)TBS
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TBS石丸彰彦プロデューサーに聞く(上)

 俳優の佐藤健(26)が主演を務めるTBSテレビ60周年特別企画・日曜劇場「天皇の料理番」(日曜後9・00)が評判を呼んでいる。大正~昭和の史実に基づき、日本一のコックを夢見て福井から上京した青年・秋山篤蔵の成長を描く人間ドラマ。「JIN―仁―」などを手掛けたヒットメーカー・石丸彰彦プロデューサー(40)は、既に決まっていた別の企画をオンエア1年前に変更。そこには、思いがけない“誕生秘話”があった。

 2012年の年末。60周年の連続ドラマを担当することが決まり、13年1月には企画書を提出。「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「Mr.BRAIN」「JIN―仁―」「とんび」などでゴールデンコンビを組む脚本家の森下佳子氏と着々と準備を進めた。

 ドラマの構成を煮詰める段階に入り、オンエアを1年後に控えた14年4月。月2回、局の仲間と皇居をランニングしていたが、その最中、ふと頭をよぎった。「あれ?この企画は違うんじゃないかな?」。それほど寒くはない、星が見える夜のことだった。 

 「水たまりがあったことを覚えています。水たまりを通過したぐらいに『あれ?』と思ったんです。ちょうど下り坂でした。きつい上り坂の後、平地になったところで、ふと思ってしまったんです」

 突如のひらめき。抱いた“違和感”は、その企画の良し悪しは別として、2015年4月に放送するにはタイミングが合わないというものだった。

 「ドラマはタイミングが重要だと思います。企画を思い付いたから、すぐに制作して放送した方がいいかというと、そうでもありません。世の中の空気はできるだけ考えないといけないと思っています」

 翌日、森下氏に企画の変更を伝えた。躊躇(ちゅうちょ)はなかったのか。

 「森下さんに会う前、朝8時ぐらいから1人で会社の喫茶店で考えていました。切り出していいものなのか…3時間ぐらい悩みました」

 森下氏は「勘なら、しようがないね」と“盟友”の決断に納得。そこから約3週間、2人は「ああでもないこうでもない、ああでもないこうでもない、ああでもないこうでもないを繰り返して」(石丸プロデューサー)今作にたどり着いた。

 今年が戦後70年、今のインターネット社会という“時代性”が新企画を決めるカギになった。

 <TBS石丸彰彦プロデューサーに聞く(下)「天皇の料理番」に込めた熱い思い「TBSドラマの矜持を示したい」に続く>

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