白都真理「人魚伝説」誕生秘話明かす…監督はそのロケ地で自殺

[ 2014年11月9日 15:03 ]

主演映画「人魚伝説」についてトークショーで語る白都真理

 映画、2時間サスペンスドラマ、舞台など数多くの作品で活躍中の女優・白都真理(55)が、8日深夜から9日早朝にかけて東京・池袋の新文芸座で行われた「日本カルト映画入門Vol.3 池田敏春編」と銘打った故・池田敏春監督の代表作4作品のオールナイト上映の中でのトークショーにゲスト出演した。

 この日は1984年公開の同作品をはじめ、「天使のはらわた 赤い淫画」(1981年公開)、「死霊の罠」(1988年公開)、「ちぎれた愛の殺人」(1993年公開)という池田敏春監督の4タイトルが一挙に上映されたもの。

 その4作品の中でも特に人気を集めた伝説のカルト映画「人魚伝説」に主演した白都が、同Blu―ray&DVDの特典映像のインタビュー聞き手でもある映画「インターミッション」の監督で映画評論家・樋口尚文さん(52)と2人で同映画の誕生秘話等について語り合った。

 樋口さんから「この映画の出演オファーがあったときはどう思われましたか?」と聞かれ、「脚本を読ませていただいただけでは、一体、どんな映画になるか全く想像できませんでした」と白都。

 主演が決まり、ロケ先の三重・志摩市に行った白都は「撮影1週間くらい前に伊勢(撮影場所)に行って海に潜る練習をしまして、こういうスポーツがあったらいいなと思うくらい最初は楽しかったんです。陸の撮影が1カ月で、そのあと水中撮影が10月上旬からあり、海はまだ温かいからと言われたのですが、台風が来たりして撮影がどんどん長引いてしまいました。このみぎわ(主人公・佐伯みぎわ)という役をやるには、私自身を追い詰めて、夕方、食事をしていても『笑うな!』と言われて、その役に成りきるために24時間、監視されているみたいな感じでした」。

 「それに耐えて耐えて、白都さんは遂に切れてしまったんですね?」と聞かれると、「どのシーンも大変で、陸の撮影をしていても水から上がってきたシーンだと常に水を拭きかけられて、肉体的にも大変なわけですよね。撮影中は24歳でして、自分の髪の毛を切ってほしいと言われたり、そのとき自宅で飼っていた犬や家族にもずっと会えなくて、不安感もあったりして、いままで我慢していたものがプチンと切れてしまったんです。感情が切れて涙が止まらなくなってしまったとき、監督が『自分でコントロールもできなくなったそういう状況をよく覚えておけ。役者なんだから、そうやって自分の身に起きたことを財産にして、なぜ自分がこうなったかということをよく覚えておいて、今度、演技でもう一回やってみろ』と言われ、何かを気づかされ、とにかくこの映画を完成させなければならないという思いで、髪を切って、もう一回、一からやり直しました。すごい大変だったけど、この監督は心底、役者のことを考えているなと思いました」と語った。

 池田監督は、そのロケ現場の志摩市で2010年12月、自らの命を絶った(享年59歳)が、樋口さんに「亡くなる前にお会いになったそうですが?」と聞かれ、「いまから10年ぐらい前にお会いしたのですが、『大変な撮影で、厳しく要求し過ぎたので、一度、あやまりたかった。おまえみたいに頑張る女優はいないよ』と言われて、ちょっと複雑な気持ちでしたが、そのとき、『おれはもういいかな』とぽつんと寂しいことをおっしゃっていました。でも、最後は明るくお別れしました」と再会の様子を明かし、監督の死を知ったときは「そのときはショックで、しばらくは…」と言葉を詰まらせながら涙ぐんだ。

 今回、同作品が初めてブルーレイ化され、樋口さんは「これまでにないいい画質ですし、私が白都さんに『人魚伝説』について85分にわたってインタビューしている映像特典もありますので、ぜひお買い求めください」とPRした。

 最後に白都は「こうやって30年前の映画が若い世代の方たちにも見ていただけるのは、映画というのは、作った人とか出ている人のものじゃなくて、見ていただける人たちのものなのかなと思いました」と話していた。

 同映画は、原発建設をめぐる陰謀で夫を殺された若い海女が、復讐の鬼と化す凄絶なバイオレンスアクションで、30年たったいまも多くの映画ファンたちの間で語り継がれる邦画史上に残るカルト作の傑作。白都は、同作で第6回ヨコハマ映画祭、湯布院映画祭の主演女優賞を受賞した。

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