兄のボケを楽々受け止めた喜味こいしさん モットーは「急がば回れ」

[ 2011年1月24日 07:00 ]

漫才コンビの夢路いとしさん(右)と喜味こいしさん=1963年3月

喜味こいしさん死去

 名コンビを組んだ兄の夢路いとしさんが、話を繰り広げつつ放り込む「ボケ」を、弟の喜味こいしさんは楽々と受け止めて「ツッコミ」を入れる。時にはボケ返し、ボケとツッコミが瞬時に入れ替わる。自在な呼吸は、まさに名人芸だった。

 1950年代、兄弟は寝る間も惜しんで漫才の芸を練った。まずは台本に忠実に。一つ一つの言葉をそしゃくし、その後に自分たちの味付けに取り掛かる。「急がば回れ」。同世代がうけていても、いつかはちゃんと評価される時代が来ることを見据えたような歩みをみせた。

 ひょうひょうと語る兄いとしさんと、だみ声で鋭くツッコミを入れる弟こいしさんの絶妙な間。代表作「交通巡査」「ジンギスカン料理」など、ふくよかな大阪弁を生かしたしゃべくり漫才は、市井に生きる人たちの息遣いや、日常の中の無邪気な笑いを伝えた。簡単なようで、実は最もハイレベルな技量が要求される領域に挑んでいた。

 2003年にいとしさんを失ってからの落胆は、はた目にも痛々しく、舞台に立つ姿は寂しげだった。

 だが1人になっても大ベテランとして上方芸能を引っ張り、俳優や「ご意見番」としても、大きな存在感を持ち続けた。

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2011年1月24日のニュース