アラン・ドロン、C―3PO…野沢那智さん死去

[ 2010年10月31日 06:00 ]

死去した野沢那智さん

 映画「太陽がいっぱい」のアラン・ドロン(74)の吹き替えや、ラジオの深夜放送などで人気を博した、俳優で演出家の野沢那智(のざわ・なち、本名那智=やすとも)さんが30日午後3時36分、肺がんのため東京都内の病院で死去した。72歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行う。後日お別れ会を開く予定。喪主は長男聡(そう)氏。

 野沢さんは今年8月、肺がんで都内の病院に入院。この日早朝、病状が急変し、長男で俳優の聡ら親族に見守られ「やすらかな表情」(事務所関係者)で旅立ったという。病室の外には中に入れなかった俳優仲間らが20、30人詰めかけていた。
 72歳の年齢を意識し、日頃から「あそこが痛い、ここが痛い」と定期的に検査を受けていた野沢さん。見舞いに訪れた仲間たちには「必ず治して戻る」と力強く話し、自ら経営する俳優養成校での後進の指導を誓っていたという。
 最後の仕事となったのは、昨年11月に収録したブルース・ウィリス主演の映画「16ブロック」の吹き替えだった。
 東京・浜町育ちの“江戸っ子”。演出家を目指し役者仲間を集め劇団を結成したが、運営に行き詰まり、借金返済の見通しが立たず途方に暮れていたときに、知人から紹介された仕事がアフレコだった。
 1965年から放送されたスパイドラマ「0011ナポレオン・ソロ」の軽妙な吹き替えで一躍人気に。アラン・ドロンの映画は当たり役となり、「太陽がいっぱい」(60年)、「危険がいっぱい」(64年)、「リスボン特急」(72年)などを担当。アル・パチーノやロバート・レッドフォード、映画「スター・ウォーズ」旧3部作のC―3POの吹き替えもこなした。最近はブルース・ウィリスの映画「ダイ・ハード」シリーズなどでも好演。第一人者として活躍した。
 アニメでは「ベルサイユのばら」のフェルゼン役、「チキチキマシン猛レース」の実況ナレーターなどでも知られた。
 67年からは放送タレント白石冬美(69)との名コンビで、深夜ラジオ「パック・イン・ミュージック」(TBS)、82年からは「那智チャコ ワイド」(文化放送)として計約25年にわたりリスナーに支持された。
 後進の育成にも熱心で、俳優養成校「パフォーミング・アート・センター」を設立し女優戸田恵子(53)ら、たくさんの俳優、声優を育てた。

 ◆野沢 那智(のざわ・なち)1938年(昭13)1月13日生まれ。東京都文京区出身。1958年、劇団東芸に入団。60年に国学院大を中退し62年に劇団薔薇(ばら)座を設立。88年にはミュージカル「スィート・チャリティ」で文化庁芸術祭賞を受賞。俳優の野沢聡(37)は長男、タレント野沢直子(47)はめい。

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