[ 2010年8月6日 06:00 ]

ヴィオレッタ役で、見事な歌唱と演技を披露したナタリー・デセイ(C)K・Miura

 なぜノセダがそこまでの存在感を示していたのかというと、登場人物の歌にぴったりと寄り添い、世界トップレベルの歌手たちの技巧を存分に引き出すことで、観客・聴衆をたっぷりと楽しませてくれたからに他なりません。つまり、指揮者が舞台全体をキッチリとコントロールし、その土台の上に乗って歌手が自分たちの力量を最大限といっていいほどまでに発揮していたのです。

 昨年、ミラノ・スカラ座の来日公演でヴェルディの「オテロ」を聴いた時も、ダニエレ・ガッティが率いるオーケストラが歌と絡み合うのを目の当たりにして、イタリア・オペラの魅力を大いに堪能したわけですが、トリノ王立歌劇場の上演はそれを上回る感動がありました。
 コンシェルジェも「登場人物の言動や心理に合わせて、オーケストラの演奏も実にきめ細かく変化していく。例えば第1幕、ヴィオレッタが突然、体調不良に見舞われるシーンでは、彼女がよろめくのに合わせてピットの中のオケの演奏も目眩を起こしたように不安定に揺れ動く。また“ラ・ボエーム”でも第1幕、部屋にロドルフォを残し若者たちが出かける場面で、ひとりが暗い階段で躓くような台詞を発するのだが、そこではオケもずっこけるように演奏を崩す。ここまで芸が細かいのは初めてといってもいいくらい。勢いドラマが盛り上がるのにシンクロするかのようにオケも燃え上がり、歌手もさらに熱くなる。それが客席に伝わり会場のボルテージは頂点に達する。折からの猛暑にも勝るとも劣らない“熱さ”は、イタリア・オペラの魂を感じさせるものだった」と驚きを隠しきれない様子で語っていました。

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2010年8月6日のニュース