“コロナ世代”と呼ばれた元球児が憧れの甲子園に立った 「あの夏を取り戻せ」プロジェクト

[ 2023年11月30日 06:15 ]

「あの夏」世代の元球児たちが甲子園に集まった
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 コロナ下で2020年夏の甲子園大会中止を経験した世代の元高校球児による交流試合「あの夏を取り戻せ」プロジェクトが29日、兵庫県西宮市の甲子園球場で開催された。同年夏の独自大会で優勝した高校を中心に45校42チームが参加。大会初日は聖地で入場行進や試合が行われ、一人の大学生が思い立って始動した壮大なプロジェクトが、実現に至った。

 コロナ世代と呼ばれた学生にしか実現できない唯一無二の「甲子園」が開かれた。3年前に全国大会中止を味わった、かつての高校球児約700人が聖地に集い、入場行進や選手宣誓をし、有志の吹奏楽が演奏する中で白球を追った。失われた高校最後の夏を自分たちの手で更新。今回のプロジェクト発起人の大武優斗さん(武蔵野大3年)は「つらかったことも忘れるほどに幸せ」と感慨に浸った。

 一人の大学生が立ち上がり、全てが動き出した。城西(東京)で野球部員だった大武さん。「当時の挫折を思い出してしまう」と高3夏以降の2年間は野球を見られなかった。だが…。「このままでは甲子園がなかったことを言い訳にして前に進めない」。20年夏に各都道府県独自大会で優勝した高校を集め、甲子園で交流試合をしようと思い立った。

 「あの夏を取り戻せ」と題し、22年6月に実行委員会を立ち上げた。クラウドファンディングで募った約2700万円に企業からの協賛金を含めて大会運営費7000万円を調達。前阪神監督の矢野燿大氏(本紙評論家)らが公式アンバサダーに就任するなど多くの賛同も得た。そしてこの日、全国から45校42チームが集まり、大会初日は抽選で選ばれた4校が聖地で試合を行った。登板した関大北陽(大阪)の小豆野隼伍さん(追手門学院大3年)が「ぶつけられなかった悔しさを、この舞台で晴らすことができました」と振り返るなど、次々と選手から感謝を伝えられた。

 交流大会は3日間行われ、残り2日間は兵庫県内の他球場に舞台を移す。大武さんは「この景色は一生忘れない」と、自らつくり上げた聖地の光景を目に焼き付けた。 (河合 洋介)

 ≪帝京前田前監督がノッカー務めた≫甲子園で試合が組まれた4校を除く41校は、それぞれ5分間の内野ノックを実施して聖地でのプレーを体験した。帝京(東京)は、21年夏限りで勇退した前田三夫前監督がノッカーを務めた。甲子園通算51勝の名将は、教え子に「久々に甲子園の土を踏ませてくれてありがとう」と伝え丁寧にゴロを転がした。当時の主将・加田拓哉さん(桐蔭横浜大3年)は「監督のノックは球足が他の方とは違って難しい。甲子園での練習はワクワクしました」と満喫した。

 ≪アンバサダーも駆けつけた≫「あの夏を取り戻せ」プロジェクトの公式アンバサダーが、球場に駆けつけて大会初日を見守った。矢野燿大氏は、入場行進後のセレモニーで祝辞を述べ「皆だからこそできるオンリーワンの大会になると思います。思い切り楽しんでください」とエールを送った。元ヤクルト監督の古田敦也氏は「あえて多くの助言はしてこなかったが、本当によくここまでたどり着いたと思います」と実行委員会の努力を称えた。

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