大阪桐蔭・前田　最後は自己最速に5キロ及ばず涙の終戦　4回戦で左手親指の皮めくれていた

第105回全国高校野球選手権大阪大会決勝   大阪桐蔭0－3履正社 （ 2023年7月30日    大阪シティ信用金庫スタジアム ）

大阪大会決勝＜大阪桐蔭・履正社＞　履正社に敗れ、目元を押さえる大阪桐蔭・前田（左）　（撮影・須田　麻祐子）　
Photo By スポニチ

　大阪桐蔭は12年から7連勝中だった夏の大阪大会決勝に敗れ、大会記録に並ぶ3連覇と6季連続の甲子園出場に届かなかった。今秋ドラフト1位候補の前田悠伍投手（3年）が8回3失点で降板し、打線も3安打で振るわず、公式戦では実に8年ぶりの零敗に沈んだ。

　前田は履正社の校歌を聞き、ベンチ前で目頭を押さえた。8回3失点（自責2）。最後の夏は甲子園に戻ることなく終わった。プロ球団のスカウトのスピードガンで最速143キロ止まり。自己最速148キロには5キロも及ばず、4四死球を与えるなど武器だった制球も安定しなかった。1年秋から過去4戦4勝で圧倒してきた履正社に初めて敗れ、「抑えようと気持ちが高ぶってリリースポイントがずれてしまっていた。悔しいの一言です」と唇をかんだ。

　エース、そして、主将としての意地は見せた。0―3の4回終了後に西谷浩一監督から「任せたぞ」と言葉をかけられ、6回無死満塁の窮地を切り抜けるなど残りの4イニングは内野安打1本に抑えた。打者として6回先頭では右前打。反撃にはつながらず、8回の打席で代打を送られて役目を終えた。

　「1年秋から大きな舞台や場面を経験させてもらって、この代からは主将もさせてもらった。濃い高校野球だった」

　6回2失点だった東海大大阪仰星との4回戦で左手親指の皮がめくれ、今夏の登板は2度だけ。「準決勝で苦しいゲームを勝ち切って、自分が投げる機会をチームにつくってもらったのに、申し訳ない気持ちでいっぱいです」。花巻東・佐々木麟太郎（3年）らとともに称される「高校四天王」で一人だけ聖地へ帰還できず、進路については「まだ分からないですけど、さらに上を目指して取り組む」と話すにとどめた。切り替えるには早すぎる夏だった。　（松本　航亮）

　◇前田　悠伍（まえだ・ゆうご）2005年（平17）8月4日生まれ、滋賀県長浜市出身の17歳。古保利小2年から高月野球スポーツ少年団で野球を始め、6年時にオリックスJr.選出。高月中では湖北ボーイズに所属。1年時にカル・リプケン12歳以下世界少年野球日本代表として世界一。大阪桐蔭では1年秋からベンチ入りし、2年秋からエース。2年時の春夏に甲子園出場で春優勝。明治神宮大会は2連覇。1メートル80、78キロ。左投げ左打ち。