日本生命・吉高壯 名門復活へ真のエースになる 150キロ取り戻すべく「もう一度、体をつくりなおす」

[ 2022年11月28日 16:14 ]

日本生命・吉高壮

 正真正銘のエースとなるための、1年が始まった。日本生命・吉高壯投手(24)は入社3年目となる23年シーズンに向けて、地道な取り組みを続けている。

 「先発を任せてもらえるようになったのが一番の収穫です。ですが、チームの命運を託されている以上、もっとしっかりしなければいけない。その役割を果たせなかったのが反省です。シーズンを通して完投0。1試合しっかり投げられる体力をつけることから、スタートしています」

 明石商から日体大を経て、21年に入社。2年目となった今季は先発投手陣の一角を任されるまでに成長した。都市対抗近畿2次予選では、3試合に先発して防御率0・47。第4代表決定戦・日本新薬戦では9回途中に降板するまで、1安打11奪三振という快投を演じた。今秋の日本選手権でも1、2回戦とも先発。首脳陣の信頼を勝ち得た一方で、チームを2大大会で躍進させるまでには至らなかった。

 「自信のある球を見送られた。真っすぐも打たれて、今のままでは上で通用しない。スピードを上げるなり、内角をもっとついて外角を遠くに見せるなり。もう一つ球種を増やすのではなく、いまあるストレートとスプリットを磨くことに決めました。ストレートがあっての変化球なので、そこがカギになると思っています」

 悔しい敗戦の中にも、学びはあった。2回戦の東京ガス戦では3回途中で5安打を浴び、2失点で降板。際どい高さ、コースにスプリットを投じながら、思うような空振りを奪うことはできなかった。相手は今夏の都市対抗でも準優勝するなど、全国でも屈指の強力打線。現状のストレートとスプリットのままなら、今後も強敵を封じ込めることは容易ではない―。より高みを目指す上で、確かな物差しを手に入れることができた。

 「もう一度、体をつくりなおします。大学時代より腕は振れている実感があるけど、球速が出ていないので」

 ストレートのキレと質を高めることにこだわった今季は、軽重量のウエートトレーニングで瞬発系を重点的に磨いてきた。チーム内で先発1番手の座を勝ち取れた部分は成長の証でも、球速は最速でも145キロ程度にとどまった。日体大2年で150キロをマーク。右肩に不安があった4年でさえも149キロを計測したことを思えば、やはり、物足りない。入社して以降、濃密なトレーニングで肉体は厚みを増し、右肩の不安も消えた。ならば、再び150キロの大台を目指すべきではないか―。首脳陣と綿密な意見交換をした末に、大学時代に取り組んでいた高重量のウエートトレーニングもメニューに加えることを決意した。

 「エースにはまだなりきれていない。結果が伴わないとだめ。自分がエースとは思っていませんが、その中でも主戦として投げる自覚は持って、人よりも多くのメニューをやっていきます。2大大会での優勝を掲げている中で結果が出ていませんが、何か一つが変われば優勝できるチームだと思う」

 都市対抗で4回、日本選手権で3回の優勝を誇る西の雄。ただ、夏秋連覇の偉業を達成した2015年以降は、思うような成績を残せていない現状がある。その閉塞感を打ち破る存在となりうるのが先発投手陣。「今年は中継ぎにおんぶに抱っこだった。変化をもたらせるよう、先頭に立ってやります」。大志を抱く右腕が、名門復活の急先鋒となる。

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2022年11月28日のニュース