戦力外、2度の育成…30歳の阪神・渡辺 初勝利導いた“第3のボール” 恩返しの1勝に

[ 2022年5月1日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神10ー3巨人 ( 2022年4月30日    東京D )

<巨・神>ヒーローインタビュー中にウイニングボールを見つめる渡辺(撮影・大森 寛明) 
Photo By スポニチ

 敵地のヒーローインタビューで何度も「遠回りして…」と口にした。30歳の苦労人・渡辺が5年目でプロ初勝利。戦力外、2度の育成契約からはい上がってきた男に当たったスポットライトはまぶしかった。

 「まさか自分が初勝利、ボールを手にするとは思っていなかったので。うれしかった」

 ソフトバンクでも同僚だった加治屋から手渡されたウイニングボールをうれしそうに見つめた。

 白星に値する快投だった。同点直後の6回を任され、無死一塁では大城の投前バントを素早い処理で二塁封殺。後続の若林、吉川を連続三振に斬るとマウンド上で小さく吠えた。「バントも狙った通りにアウト取れましたし、その後の打者もやるべきことができた」。打線が一挙6得点を呼び、勝利投手の権利が転がり込んできた。

 “第3のボール”がキャリアの活路を開いた。ソフトバンク時代、直球とスライダーに自信を持つ一方でその2球種を生かすボールに苦しんでいた時に助言を授かったのが、当時投手コーチだった倉野信次氏。「真っすぐばかり投げないといけないスポーツじゃない」という言葉をヒントに習得したのが、この日も配球に織り交ぜたツーシームだ。「スライダーとツーシームのコンビネーションは自信を持って投げられている」。昨年10月に戦力外通告を受けた際も「必ずどこかで必要としてくれるチームは出てくる」と励ましてくれた同氏への恩返しの1勝にもなった。

 「“タイガースのために一生懸命投げなさい”と両親、妻からも言われていた。勝ちゲームで、阪神のために投げられたので良かった」。虎デビューから10試合連続無失点。遠回りした分、開けた道は輝いて見えている。(遠藤 礼)

 ▼工藤公康氏(渡辺のソフトバンク時代の監督、テレビ解説で初勝利を見届け)阪神で活躍する姿を見られて本当に良かった。スライダーもいいけど、あのツーシームがなかなか打たれないんですよ。武器を生かして、これからも頑張ってほしい。

 【阪神・渡辺はこんな選手】
 ☆生まれ&サイズ 1991年(平3)9月19日生まれ、新潟県三条市出身の30歳。1メートル85、84キロ。
 ☆苦労人 中越高、青学大からBCリーグ・新潟を経て、17年育成ドラフト6位でソフトバンクに入団。20年に支配下登録され、21年10月に戦力外通告。同年12月に阪神と育成契約。開幕直前の3月22日に支配下契約を結び、背番号128から92に変更。
 ☆武器 左のサイドスローから大きく曲がるスライダー。
 ☆同期 青学大ではオリックス・杉本と同学年。
 ☆家族構成 夫人、1歳の長女。
 ☆アルバイト BC新潟時代にはオフにホームセンターでアルバイトをしながら生計を立てた。
 ☆愛称 なべじい
 ☆大切にする言葉 「生を必するものは死し、死を必するものは生く」。戦国武将・上杉謙信の言葉で、「失敗を恐れずに挑めば、成功につながると思う」。

 《育成ドラフト入団で最年長初勝利》渡辺(神)がプロ初勝利。育成ドラフトでプロ入りした投手の初勝利は今季4月20日の水上(西)に続く29人目で、移籍を経ての初勝利は20年の長谷川(ソ→ヤ)に続く2人目。30歳7カ月は12年星野真澄(巨)の28歳1カ月を上回る最年長記録となった。また、移籍初登板の3月26日ヤクルト戦から10試合連続で無失点。国内移籍で阪神加入1年目の投手が開幕から10試合以上無失点は16年に中日から移籍した高橋聡文の11試合に次いで2リーグ制以降のチームでは2人目。

続きを表示

2022年5月1日のニュース