数字だけでははかれない球界最年長・福留の価値 2冠投手・柳とシート打撃でハイレベルな駆け引き

[ 2022年2月23日 07:45 ]

中日・福留
Photo By スポニチ

 中日・北谷キャンプ第4クール最終日の20日。1軍本隊が宜野座で阪神と練習試合を戦っていたその裏で、もう一つの熱い戦いがあった。シート打撃で残留組の高橋周、福留、ビシエドと2冠右腕・柳との真剣勝負が繰り広げられた。

 緊張感が漂う主力打者と右のエースの対決。中でも球界最年長44歳・福留の打席は見応えがあった。第1打席は1ボールからカーブを右前打。第2打席は2―2から内角にズバッと直球を決められて見逃し三振に倒れた。

 そして、最終第3打席に名球会打者VS右のエースのハイレベルな駆け引きが凝縮されていた。真っすぐ2球で追い込まれた後、変化球を2球見極め、2―2からチェンジアップを狙い澄まして中前へ。打席の福留は両手を挙げて喜び、マウンドの柳は「アーッ」と大きな声を出して悔しがった。

 実は対戦の約1週間前から二人の駆け引きは始まっていた。ホテルの食事会場で会うたびに「何から入るの?」「初球は○○で入ろうかな」と腹の探り合いが続いていた。

 柳にとっては最高に有意義な1週間だっただろう。大打者との丁々発止のやりとりを楽しみ、じっくりと配球を考え、調整した貴重な時間は相手が百戦錬磨の福留でなければ得られなかった。

 登板後、柳は福留の読みの深さに脱帽した。「対戦は同じチームになってから初めて。楽しみにしていたが、2本打たれてあっぱれです。特に3打席目は悔しかった。ぼくが考えていたものより先をいかれた。技術もそうだし、考え方なども勉強になることばかりです」。

 キャンプインから1軍で若手にまじって練習する福留も、この対戦を楽しみにしていた。「もう何日も前から餌をまかれてきたのでね。何とかして返り討ちにしてやろうと思っていた。とりあえずバットに当たって良かった。(柳が)どういう考えを持ってやっているのか、どういう意図があるのかと自分も考えながらやるのが楽しみなので、良い練習ができたんじゃないかと思う」。

 数字だけでははかれないベテランの存在価値がここにある。取材する側にとってもぜいたくな時間だった。(記者コラム・中澤 智晴)

続きを表示

2022年2月23日のニュース