斎藤佑樹は写真で映える。引退後も太陽のような笑顔で

[ 2021年10月30日 07:30 ]

引退セレモニーでファンに笑顔で手を振る斎藤 (撮影・光山 貴大)
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 プロ野球に携わる現場のカメラマンから何度か同じフレーズを聞いたことがある。「斎藤佑樹は写真に映える」と。日本ハムで今季限りで現役を引退するが、16から19年まで担当していた記者も全く同感だ。これまでに記者用の小型のデジカメなどで何度も撮影したが、他の選手は何枚撮っても「これだ」という一枚が撮れないことが多いが、斎藤の場合はほぼ一発で満足の一枚が撮影できた。

 なぜか。これは勝手な推測だが、入団当初も現役晩年だった近年もグラウンドでは笑顔が多かったからだと思う。斎藤も「結果が出ないからといって、グラウンドでつまらなそうな顔をするのは野球に対して失礼。いつも笑顔でいるようにしています」と語っていた。

 11年のプロ入りから2年間で11勝を挙げたが、その後は肘や肩の故障もあって成績は低迷した。早実のエースとして06年夏の甲子園で駒大苫小牧との引き分け再試合の熱戦を演じて全国にその名をとどろかせ、早大でもスター選手。ドラフト1位で入団した日本ハムでも1年目の11年の春季キャンプでフィーバーを巻き起こすなど常に注目される存在だった。よって成績が低迷すれば批判や雑音も増加。精神的にふさぎ込み、表情も暗くなってしまいそうになるが、斎藤は笑顔を貫いた。だからこそ、写真にも映えたんだと思う。

 札幌ドームで行われた17日のオリックス戦で引退登板に臨み、最後の投球を披露した。当時はロッテと激しく優勝を争っていた相手に対する真剣勝負で、福田に四球で少しだけ悔しそうな表情を浮かべたが、三塁ベンチに戻るまで笑顔を貫いた。ベンチで栗山監督にねぎらいの言葉を掛けられて号泣し、試合後のセレモニーでも涙を流した。これまで抑えていた感情が、最後に涙となってあふれたのだろう。

 斎藤が迎えた野球人生の一つの区切り。もう無理に笑わなくてもいい。それでも全国に名前をとどろかせたあの夏の太陽のようにまぶしい笑顔で、次なる道に進むのだろう。(記者コラム・山田忠範)

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2021年10月30日のニュース