阪神・佐藤輝 60打席ぶり安打に笑顔「必死だったんで。みんな待ってくれていたんで。出せてよかった」

[ 2021年10月6日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神5ー2DeNA ( 2021年10月5日    横浜 )

<D・神>初回2死一、二塁、右前適時打を放って連続無安打をストップさせ、ベンチに向かってガッツポーズの佐藤輝(撮影・北條 貴史)
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 やっと出たで!阪神・佐藤輝明内野手(22)が5日のDeNA戦で初回に適時打を放ち、60打席ぶりに安打を放った。初回2死一、二塁で坂本から右前に適時打。プロ野球野手ワースト記録に並ぶなど苦悩の時期を過ごした大器が、ついに待望のHランプをともした。チームは5―2で4連勝を飾り、3年連続でのシーズン勝ち越しが確定した。

 強面(こわもて)な大器が、一塁ベース上で安どの表情を浮かべた。8月21日を最後に、実に44日間も遠ざかった安打の感触……。苦しんだ。心の底から苦しんだ。初めて直面したぶ厚すぎる壁。60打席ぶりに響かせた快音が、チームを勢いづけた。その事実が、佐藤輝には何よりもうれしかった。

 「いろいろ維持だったり、長いシーズンでプロ野球は難しいなとすごく思いました。この経験を糧に、レベルアップしていけるように」

 初回に2点を先制し、なおも2死一、二塁。坂本に2球で追い込まれたが、屈しなかった。カウント2―2からの5球目、低めに沈むカットボールに反応。サトテルらしい痛烈な打球が、一、二塁間を破った。二塁から大山を生還させる3点目の適時打。ロッテ・岡田に並んでいた野手最長の連続打席無安打に終止符を打った。

 「必死だったんですごくうれしい。みんな待ってくれていたんで。やっと出せてよかったです」

 一塁ベース上から三塁ベンチに目を向けると、先輩たちが自分のことのように喜んでくれていた。だからこそ、何としても、このメンバーで優勝したい――。思いはさらに、深まった。

 初めて過ごす連戦続きの夏。1キロ弱だが体重も落ちた。「ちょっとご飯とかしんどかったですけど」。初の2軍降格と屈辱も味わったが、下を向く暇もなかった。「もちろん悔しいですけど、それが自分の実力。大学の時も(不振期が)あったので、まあまあしんどいですけどやるしかないので」。近大3年秋も打率・188と停滞した時期があった。「いろんな方から連絡いただきましたし。でも、やっぱり一番は打ちたいという気持ちだけですね」。初心に戻り、一心不乱にバットを振り続けた。

 この日散髪しての一打に「気分転換の効果ですね」と笑ってみせるなど、新人離れしたちゃめっ気も戻ってきた。16年ぶり優勝には、アーチを量産し前半戦をけん引した背番号8の躍動が不可欠だ。「本当にチームの優勝に直結するような数字を残していきたい」。完全復活への号砲が、横浜の地で鳴り響いた。(阪井 日向)

 《単一シーズンでリーグ最長》佐藤輝(神)が初回に右前適時打。8月21日の中日戦8回の中前打以来22試合、60打席ぶりの安打となった。この間の59打席連続無安打は、単一シーズンではセ・リーグ最長。連続シーズンの記録も含めば、16~18年の岡田幸文(ロ)に並ぶ、野手の両リーグ最長記録。

 <記者フリートーク 阪神担当・阪井 日向>

 順風満帆、いや、それ以上の成績を夏場まで残しながら、誰もがここまで続くと思わなかった長いトンネル。再昇格後もしばらく安打が出ず苦しい時期を過ごしてきたが、スタメンを外れだした時期からは早出でバットを握り続け、2軍調整期間中は練習終了後も居残りで汗を流した。もがき続けた苦労が、ようやく1本の安打として報われた。

 教えてもらうコーチが違うからこそ新たな引き出しが得られると、2軍コーチ陣の指導にも真摯(しんし)に耳を傾けた。「すごく素直な目で聞いて、“おまえ、いい顔してんな”といつも言うんだけど。人が言ったときには、すごく素直で何のひねくれもなく聞いてくれる」とは清水2軍野手総合コーチ。苦しみ抜いた期間が無駄でないことは、残りのペナントレースで証明するつもりだ。

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