楽天、特別な日に諦めない姿勢体現して逆転勝利 下妻「東北人の誇りを持ってやっていく」

[ 2021年3月12日 05:30 ]

オープン戦   楽天8-5ロッテ ( 2021年3月11日    静岡 )

<楽・ロ>5回2死一塁、適時二塁打を放つ下妻 (撮影・白鳥 佳樹)
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 東北に届ける勝利だ。東日本大震災から10年を迎えた11日、楽天はロッテとのオープン戦(静岡)に臨み、8―5で逆転勝利を飾った。東北出身の「みちのく戦士」たちが躍動。山形県出身の下妻貴寛捕手(26)は2安打1打点、岩手県出身の銀次内野手(33)も1安打1得点と激走を見せた。被災地球団として迎える特別なシーズン。10年前の震災発生時に兵庫・明石でも対戦した同カードで、節目の日の勝利をもぎ取った。

 ただのオープン戦ではない。勝利への執念をたぎらせ、全力で戦った。黙とうしてから臨んだ試合。スタメンには下妻、銀次の東北出身の2選手が名を連ねた。

 まずは下妻だ。3回に左前打を放つと、5回2死一塁の2打席目は、右越え適時二塁打。直前の守備では2死一塁の場面で高部の二盗を阻止し「2打席ともヒットになって、内容も良かった。期待に応えられたと思う」と胸を張った。

 酒田南高1年の時に震災を経験。太平洋側に比べて山形県は被害は大きくなかったが、5月に復興試合で宮城県を訪れた際に衝撃を受けた。「高速道路から(沿岸部の景色を)見て、家の上に車があったりして。今でも覚えている」。12年夏の甲子園では、選手宣誓の大役。チームメートと相談しながら文言に復興への思いを込め「応援メッセージを大舞台で伝えることができた」と振り返る。

 12年ドラフト4位で楽天入り。「東北のチームに入ることができたのも何かの縁」。1年目に球団は初めてリーグ優勝と日本一を達成も、歓喜の輪には入れなかった。あれから8年。正捕手争いの真っただ中で「今度は輪の中に入っていきたい。東北人の誇りを持ってやっていく」と誓いを新たにした。

 11年当時も在籍した現役メンバーは田中将、辛島、塩見と銀次の4人になった。岩手出身の銀次は、6回に三遊間への深いゴロで、全力疾走し内野安打。続く横尾の右中間二塁打でも激走し、一気に生還し「全力でやっている姿を見て元気になってもらいたい」と口にした。

 最大4点差を逆転勝ち。石井監督は「今日のように諦めずに戦うことが僕たちの使命。きれいごとを言うよりも姿を見せる。勝ちきらなければいけない大事なシーズンになる」と言った。震災後、10度目の「3・11」。大切なものを再確認する一日になった。(重光 晋太郎)

 【12年8月8日 夏の甲子園開会式の酒田南・下妻主将の宣誓】
 私が暮らす東北を、そして東日本を未曽有の災害が襲ったあの日から、いま日本は決して忘れることのない悲しい記憶を胸に、それでも復興への道を少しずつ確かな足取りで歩み始め、多くの試練と困難に立ち向かっています。

 私たちのひた向きなプレーが、あすへと懸命に生きる人々の希望となることを信じ、私たちの躍動する体と精神が、あすへと進む日本の無限の可能性となることを信じ、そして、私たちの追い続ける夢が、あすの若者の夢へとつながっていることを信じます。

 全国の仲間が憧れたこの甲子園で、湧き上がる入道雲のようにたくましく、吹き抜ける浜風のように爽やかに、正々堂々と全力でプレーすることを誓います。

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