新庄剛志氏がトライアウトで投じた一石とは

[ 2020年12月27日 09:00 ]

トライアウトを終え、笑顔でサムアップする新庄氏
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 元日本ハムの新庄剛志氏(48)が、今月7日に12球団合同トライアウトに参加し、大きな話題を呼んだ。結果は周知の通り、本人が期限を定めた6日間にオファーが届かず。06年以来のNPB復帰は実現しなかった。

 私は新庄氏が日本ハムでプレーした04~06年に同球団を担当。当時と比べるのはナンセンスなのかもしれない。だが、月日の流れを感じさせたというのが正直な印象だ。

 コンパクトなスイングを心がけた新打法でシート打撃の最終打席で左前適時打を放った。一方、守備練習では三塁に入り、最も自信を持っているはずの外野は守らなかった。シート打撃では一塁、三塁、二塁を守った後、最後に中堅へ。トライアウトに向けた準備に密着したテレビ番組で「(ケガが)怖いです」と話していた。ケガのリスクを極力避けつつ、終盤に懸けたのだと想像する。残念ながら打球が飛んでこず、守りでアピールする場面は訪れなかった。

 6日間を経て、新庄氏は復帰を断念する意向を示した。ただ、今回の挑戦を「無謀な挑戦」「彼だからできるサプライズ」と片付けるのは、あまりにもったいないのではないか。

 今回のように15年ぶりとまではいかなくても、大リーグでは、現役引退から数年後に復帰するケースは少なくない。レッドソックスなどで活躍した右腕ダニエル・バードは、イップスが原因で18年に一度引退した。しかし、ダイヤモンドバックスの球団スタッフを経て今季、7年ぶりにメジャーに復帰。ロッキーズで23試合に登板し、カムバック賞を受賞した。

 また、日本球界では例がない他のプロスポーツとの二刀流がボー・ジャクソン(NFLと大リーグの二足のわらじ)を筆頭に過去何度もあり、今後また誕生する可能性がある。NFLのカージナルスから19年ドラフト全体1位で指名されたQBカイラー・マレーは、走攻守そろった外野手でもあり、18年に大リーグのアスレチックスから1巡目(全体9位)で指名を受けた。現在23歳。将来的な話として「両方できればいいと思うし、間違いなくできると感じている」と語っている。

 阪神時代の打撃コーチで、今回の挑戦前に新庄氏の打撃を指導した柏原純一氏は「コロナがあり、日本シリーズも4連勝で終わり、プロ野球がもうひとつだった。そこに一石を投げてくれた」とねぎらった。1年がかりの準備を経て、新庄氏が日本球界に向けて投じた一石。これまでの常識や慣習にとらわれない挑戦が、今後の球界発展に向けて意義深いものになると信じたい。(記者コラム・大林 幹雄)

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2020年12月27日のニュース