四国銀行 大手術乗り越えた柴田主将が13年ぶり2勝目導く、好返球でリード守る「楽しんでやれた」

[ 2020年11月26日 16:14 ]

都市対抗野球第5日   四国銀行1―0ハナマウイ ( 2020年11月26日    東京D )

<四国銀行・ハナマウイ>7回2死二塁、好返球を見せ本塁をアウトにした四国銀行・柴田(撮影・河野 光希)
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 不屈の男が勝利の原動力となった。四国銀行の主将・柴田一路外野手(25)が攻守でナインをけん引。13年ぶりの大会2勝目を導き「楽しんで野球をやれたと思います」と笑顔で胸を張った。

 東京ドームのグラウンドに立てたことを、柴田は「奇跡です」と表現した。昨年12月25日。勤務を終えて店舗を出たところで意識を失い、高知県内の病院に緊急搬送された。事は最悪の方向に進んでいく。年明けの1月7日には医師から脳の左側に腫瘍があることを告げられ、3月中旬から2週間の検査入院。5月13日に京都大学医学部付属病院で、実に9時間に及ぶ覚醒下腫瘍摘出手術を受けた。

 確定診断は「悪性脳腫瘍」。手術は成功したが、腫瘍が言語野を侵食していたため、術後1カ月は言葉を発することはできなかった。それでも野球への思いが消えることはなく、地道なトレーニングと驚異的な回復力で7月6日にチームに再合流。8月のオープン戦に出場し「これだったら大丈夫という感じだった」と手応えをつかんだ。

 「目標は試合に出ることだったが、都市対抗予選に出ることが決まったので、その段階から試合を意識しながらやっていました」

 四国地区2次予選では5打数1安打ながら2四球1犠打と“つなぎ役”として4年ぶりの本大会出場に貢献。生命の危機を乗り越え、夢にまで見た舞台にたどり着いた。

 ヘルメットにフェースガードを付けていること以外、手術の影響を感じさせる場面はなかった。「7番左翼」でスタメン出場すると、0―0の2回2死、外角142キロ直球を逆らわずに右前に運び出塁。守備では1―0の7回2死二塁、左前打を素早く処理し、本塁へワンバウンド送球。二走を刺し、同点を許さなかった。

 「まだ完全には戻っていないが、考え方はガラッと変わった。俯瞰(ふかん)して野球を見られるようになった。そういう面では、病気になったことが、ありがたいと思う」

 生還した者しか分からない境地。究極のプラス思考が何よりの武器となっている。

 3回無死、1番・山中が放った右越え本塁打の1点を守り切って2回戦進出を決めた。前回、勝利を挙げた2007年は2回戦で富士重工業に零封負け。次戦に勝てば、チーム史上初の1大会2勝となる。

 「目の前の試合を一戦一戦、大事に戦っていくだけ。常にチャレンジャーの気持ちでやっている。相手がどことか関係なく、ウチらしい試合ができればと思います」

 野球ができる喜びを胸に、最高の舞台で最高のプレーをする。

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