東尾修氏 球界の盟主交代とも言える圧倒的な差 巨人・岡本の野球観も変わる

[ 2020年11月25日 23:06 ]

SMBC日本シリーズ2020第4戦   ソフトバンク4ー1巨人 ( 2020年11月25日    ペイペイD )

<ソ・巨>3回2死、松本(左)から三振する岡本(撮影・木村 揚輔)
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 ソフトバンクと巨人の日本シリーズはソフトバンクの2年連続4連勝に終わった。スポニチ本紙評論家の東尾修氏は圧倒的な差となったシリーズを「盟主交代」と称した。

 球界の盟主の座は、巨人からソフトバンクへ――。そんな思いを強くした日本シリーズだった。力の差をまざまざと見せつけて2年連続4連勝。ここ10年で7度目の日本一だ。思い出すのは西武の黄金時代。82~92年の11年間で8度、日本一に輝いた。私も、ソフトバンクの工藤監督も当時、現役メンバーとして名を連ねていた。

 現在のソフトバンクの強さは、当時の西武に匹敵している。高いレベルで投打のバランスが取れて、チームとしての完成度が高い。西武は渡辺久信、郭泰源(カクタイゲン)ら150キロ超の球速を誇る、パワーで勝負できる先発陣が整備されていた点も似ている。バラエティー豊かなリリーフ陣を含めると、投手力はソフトバンクの方が上かもしれない。さらに打者では清原和博、秋山幸二、デストラーデらパワー系の打者がズラリ。これも柳田を中心とした強力打線と重なる。

 組織としての強さも似ている。ソフトバンクは千賀、石川、甲斐らが育成出身。球が速い、遠くに飛ばす…。そんな一芸の選手を集めて、素材を磨く。片や当時の西武はスカウティングが光った。秋山はドラフト外で、伊東勤は練習生を経て入団。(工藤)公康はドラフト6位で獲得した。現場だけでない。チームが組織として一体となって強さを追求しているのだ。

 それにしても、公康はいい投手を育てた。彼が第2戦に先発した90年の日本シリーズは巨人に4連勝。岡崎郁が「野球観が変わった」と言ったのは語り草だ。西武は当時の堤義明オーナーの号令で、「盟主・巨人に勝ってこそ本当の日本一」と心に誓って試合に臨んだ。ソフトバンクは、力でその座を奪い取ったと言っていい。

 巨人の主砲・岡本は4試合で13打数1安打の打率・077。この日も1、2打席目は直球で押し込まれて空振り三振に倒れるなど、ソフトバンク投手陣の質の高いボールに振り負け、ついていくのが精いっぱいだった。パワー系の投手に圧倒されたことで、今後の野球への取り組み方すら変わるのではないか。それほど衝撃的だったはずだ。

 ソフトバンク、そしてパ・リーグに対抗するためには、もっと強く振り切ることがチーム全体として必要。9番打者の甲斐でさえ、フルスイングで2本塁打を放った。その姿を見て巨人は、そして他のセ・リーグのチームはどう思ったか。あと2カ月あまりで来春のキャンプを迎える。練習方法、取り組み方…。セ・リーグの野球が変わるのか。エポックメイキングといえる日本シリーズだった。(スポニチ本紙評論家)

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