巨人・増田大 とび職で磨いた失敗恐れない心で“神走塁” 野手登板も経験「楽しかった」

[ 2020年10月31日 05:50 ]

セ・リーグ   巨人3―3ヤクルト ( 2020年10月30日    東京D )

<巨・ヤ>優勝が決まり、抱き合う原監督(左)と増田大(撮影・吉田 剛)
Photo By スポニチ

 【増田大・独占手記】巨人・増田大輝内野手(27)が本紙に独占手記を寄稿した。近大中退後、とび職、独立リーグを経て育成で入団した苦労人。出場67試合ながらリーグ2位の22盗塁を記録している代走のスペシャリストは7月19日のDeNA戦で二塁から内野安打で一気に生還した「神走塁」を自ら解説した。大敗した8月6日の阪神戦で巨人では2リーグ制以降史上初だった「野手登板」の舞台裏も明かした。

 やはり大切なのはスタート。スピードがそれほどなくてもスタートが良ければセーフになれると思う。思い切りの良さは人よりも強いかなと思います。普段の生活は優柔不断。レストランのメニューも悩みます。妻に「これを頼んで一緒に分けよう」と言われ「分かった」となる。

 DeNA戦(7月19日、横浜)では(2―3の9回に)代走で出場して二盗。その後、二塁からのスタートは、相手投手が投げて打者の丸さんが打つ手前、3分の2くらいの距離で切りました。2ストライク2アウトだったので、「ストライクゾーンに行くな」と思った瞬間。投げてすぐだとさすがにまだ分からない。ほぼ100%に近い確率で「打つ」と思ったのでスタートを切りました。

 打った後の打球は見ていません。二塁から一目散に走りました。ライトに抜けたと思っていたので、生還してリプレー検証の時に「あっ、セカンドが捕ったんや」と。二塁から二塁内野安打での生還でした。打球を見るのと見ないのとではスピードは変わる。いつもは足からですが、捕手の位置を見て「これはもう頭からしかない」と滑り込みました。

 東京ドームでのナイターの日は、午前11時から11時半に球場入りしてお風呂で膝から下を温めます。着替えてから前日の映像を見て気づいたことをノートに書く。午後0時半くらいには動きだして、ストレッチやジャンプ系のトレーニング。試合中は流れを見て5回裏や6回から股関節、お尻、肩甲骨のストレッチ、動体操をします。

 阪神戦(8月6日、甲子園)での登板時(0―11の8回1死から)は、原監督から「肩を壊さないように楽しんでこい」と送り出されました。コーチから初めて「ピッチャーできるか?」と聞かれたのが昨年5月。「ついに来たか」と、ワクワクの方が勝ってました。しかも甲子園のマウンド。申し訳ないですけど凄く楽しかった。最速は138キロ。ストライクは入ると思っていたので四球、四球で長打というのはないと思っていました(2/3回を無安打1四球無失点)。東京ドームでも一度ブルペンで肩をつくりました。登板はなかったですけど、テレビを見たら僕の投球練習が「映ってるやん!」と。

 まさかとび職をしていた自分が…。今の状況はドリームです。日当8000円で20日行って16万円ほどの給料でした。外壁工事やペンキ塗りのための足場を組む仕事。橋にボルトをつけたり鉄骨を入れたりもしました。高いところに上って作業もしましたし、夜勤もありました。土日を休みにしてもらい、草野球をしていた。職場には「そんな簡単に野球選手になられへんやろ」と言う人もいました。

 とび職の経験があるので、思い切れるメンタルがついたんじゃないかなと思います。失敗を恐れていては先の塁も取れない。絶対1点が欲しい場面で必要としてもらっているのでベンチ、監督の期待に応えたい。成功率、思い切り、勘の良さ、全てレベルアップしていきたいです。(読売巨人軍内野手)

 ≪連覇決定試合は9回代走で出場≫増田大は同点の9回無死から四球で出塁した田中俊の代走で出場。得点にはつながらなかったが相手バッテリーを揺さぶり、次打者の安打などで三塁まで進んだ。10月は右膝痛のため一時離脱もあった。111日ぶりに先発した28日のDeNA戦は3盗塁を決めたが、2失策もあった。「日本シリーズで戦えることに感謝して最後まで精いっぱい頑張ります」。悔しさは大舞台で晴らせばいい。

 ≪優香夫人と2人の子供へ直筆メッセージ≫増田大は心の支えである優香夫人と2人の子供に直筆のメッセージを寄せた。昨年の8月にはお立ち台から、徳島で離れて暮らす家族に「パパ、やりました~!」と叫んだ。15年育成ドラフト1位で入団し、「野球に集中する環境づくりを」という優香夫人の配慮で単身上京。今年の母の日には花を贈り「頭が上がりません。凄いなという気持ちと、感謝の気持ちの両方です」と話していた。

 ◆増田 大輝(ますだ・だいき)1993年(平5)7月29日生まれ、徳島県出身の27歳。小松島では3年夏の県大会4強が最高成績。近大中退後、四国IL・徳島に2年間在籍し、15年育成ドラフト1位で巨人入団。17年7月に支配下登録された。50メートル5秒9。通算成績は142試合で打率.233、0本塁打、7打点、37盗塁。1メートル72、68キロ。右投げ右打ち。

続きを表示

この記事のフォト

2020年10月31日のニュース