各球場で飛距離の大きな本塁打が連発 「ボールが飛ぶ傾向」に思うこと

[ 2020年6月24日 09:00 ]

<巨・神1>3回2死、先制ソロを放つ阪神・西勇(撮影・木村 揚輔)
Photo By スポニチ

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で当初の3月20日から大幅に開幕が延期されていたプロ野球が今月19日にようやく開幕した。ファンの方々もご存知だとは思うが、各球場で飛距離の大きな本塁打が連発している。

 開幕戦では阪神・西勇や広島・大瀬良が一発を放ち、翌20日は6試合で実に13本塁打が記録された。今月2日から16日まで行われた練習試合でも全68試合で実に161本塁打が飛び出し、1試合平均は昨年の公式戦の1・97を大幅に上回る2・37。その傾向がシーズンに入っても継続している。

 基本的に本塁打はプロ野球の華だと思う。静岡出身で43歳の記者は阪神ファンだった幼少期には両親に連れられて後楽園や神宮だけでなく、甲子園にも足を運んだ。やはり現在でも覚えているのは、申し訳ないが投手の好投ではなく巨人・原や阪神・フィルダーらの豪快な一発。夜空に描かれた白いアーチを鮮明に思い出すことができる。だから本塁打はファンが盛り上がるためには不可欠な要素であると言える。

 一方で今年も含めた近年の「ボールが飛ぶ傾向」を100%歓迎できない自分もいる。記者は昨年まで日本ハムを担当していた。2019年は5位に低迷したが、開幕戦での中田のサヨナラ満塁弾など思い出深い試合は多い。対照的に衝撃的だった試合は6月18日のDeNA戦。開幕投手を務めるなど先発の柱として順調に登板を重ねていたエースの上沢が、ソトのライナー直撃で左膝蓋(しつがい)骨を骨折したのだ。投球後のフィールディングに定評のある右腕が対応できない打球速度。当時は栗山監督も「(横浜スタジアムの三塁)ベンチまで(骨が折れる)音が聞こえた。あんな音は今まで聞いたことがない…」と声を落としたほどのショッキングな出来事だった。

 その数日後、日本ハムのある投手が言った言葉が印象的に残っている。「ボールの反発力が高まればホームランが増えてファンも喜ぶ。でも、それだけ投手の危険は高まるんです」。その投手も数日後に投手強襲の打球を受けた。幸いにも大事には至らずに離脱することはなかったが、投球後にいち早くライナーに備えるために少しフォームを微調整したところ球威が激減。不振に陥った。

 もちろん規定の範囲内でボールは製造されているのだろうし、問題提起するつもりもない。選手生命に関わるような大きな悲劇が生まれることなく、120試合の特別な1年が終わってほしい。(記者コラム・山田 忠範)

続きを表示

2020年6月24日のニュース