阪神・近本、プロ初マルチ 右手一本で技あり2点打

[ 2019年4月4日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神3―6巨人 ( 2019年4月3日    東京D )

8回2死満塁、近本はバットを折られながらも左前に2点適時打を放つ(撮影・大森 寛明)
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 快音ではない。近本のバットからは鈍い音がした。フルカウントから2度のファウルを重ねた末の8球目。微妙に動く外角低めの直球を懸命に先端で当てた。バットはグリップ付近で割け、左手は離すしかない。残った右手だけを頼りに打球が左前へ落ちる軌道を必死に保った。

 「引っ張ろうとせずにいけた。ゼロできていて、完封では負けられないと思っていたので四球でも何でもいいから、塁に出ることを考えていた」

 6点劣勢で敗色濃厚の8回。単なる惨敗で終わらなかった。2死満塁からメルセデスに浴びせた左前適時打。走者2人を還し、零敗を阻止した。開幕からの5試合で3打点はチーム最多。得点力不足に悩む打線にあって存在感は際立つ。

 昨季苦しめられたメルセデスとの今季初顔合わせでも、先入観のない新人にすれば過去の相性など関係ない。「何にも知らないので。来た球を打つということしか考えていなかった」。初回の初対戦では1ボールから2球目のスライダーを左前打。最初のスイングで結果を出し、苦手意識など芽生える余地はなかった。

「今日は狙ったところに打てた。三遊間の打球とかはよかった。それが最後の結果につながったと思う」

 自己評価したのはプロ初のマルチ安打を記録した2打席だけではない。4回1死で外角152キロを遊撃左へ打ったゴロだ。追い込まれた状況で工夫した打撃が8回の布石になった。加えて過去2度のゴールデングラブ賞を誇る坂本勇の逆シングル捕球にミスを誘ったのは、随所で見せる俊足が重圧をかけたからだ。その意味で、けん制で誘い出された初回のプロ初盗塁死も無駄ではない。前夜に続き、初の“伝統の一戦”で堂々の躍動が光った。(長谷川 凡記)

○…阪神は昨季メルセデス(巨)に防御率0・61と封じ込められ、4試合で1完封を含む2勝を献上している。8回、近本と糸井の連打による3打点は、昨季10月9日(甲子園)6回の大山に続く通算2、3本目の適時打でも、攻略には至らなかった。通算対戦成績は5試合でメルセデスの3勝0敗、防御率1・21になった。

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2019年4月4日のニュース