オリックス・T―岡田が“異質”な野球教室を開催するワケ

[ 2018年12月13日 12:00 ]

オリックスのT−岡田
Photo By スポニチ

 プロ野球はオフを迎えると、選手も様々な活動が増える。人気イベントの1つが野球教室。選手に直に指導された少年(最近は少女も多い)たちには、いつまでも良い思い出として心に残る。オリックスのT―岡田も8日に、兵庫県三木市で無料少年野球教室として「Tー岡田ベースボールスクール」を開催した。

 と、ここまでは普通の話だ。だが、実際は異質な野球教室だ。通常、野球教室に参加する選手には、多少の交通費(ギャラ)が出る。チャリティーとして、受け取らないケースもあるが、T―岡田は違う。他に参加する選手のギャラを自ら払い、さらにMCなどスタッフ分も自腹。つまり自らお金を払って、野球教室を開催しているのだ。大口のスポンサーがいるわけではない。知り合いに協力を依頼し、手弁当ながら教室を開く。お金を払ってまで、子どもたちに野球を教える選手の話は、あまり聞いた事がない。今年で3回目。しかも彼は、そんな事を自慢げに公言したりしない。そんなところが、私も好きなのだ。

 「最近、本当に野球人口が減っていると感じるんです。野球は用具を買うのにお金が掛かったり、場所もいる。自分が小学生の時、対戦していたチームがなくなった、と聞いて、ガッカリしたんです」

 聞けば、なくなったのは同僚の岸田のチームらしい。プロ野球選手を輩出するようなチームも、野球人口の減少に伴い、なくなってしまう時代だ。選手が危機感を感じるのも無理はないだろう。T―岡田は今季まで、オリックスで選手会長を2年間務めた。12球団の選手会の役員が集まる総会でも、野球人口の減少に対して最近は大きな議題になっているようだ。「だからこそ、現役選手がやらないといけないと思った。魅力ある野球界になってほしい。まずはボールに触れるという入り口の部分で。良い選手がメジャーに行ってしまう時代ですが、NPBも魅力あるものになってほしい」と、心の叫びを打ち明けてくれた。

 さらに翌日9日のことだ。大阪市内でファンミーティングを開催した。選手と近い距離で触れ合える人気イベント。その会場の一角に、ある募金箱を設置した。

 心臓移植が必要な1歳6カ月の男の子を救うための募金。「しょうへいくんを救う会」(https://www.saveshohei.com/)として、募金を受け付けたり、SNSなどで情報拡散を求めている。人づてに聞いて、自らも「何かできないか」と思い、募金箱を設置したという。自身の子どもと同じ1歳。「産まれてからずっと病院で、一度も家に帰ったことがないを聞いた」。少しでも協力したいと思い、行動に移した。何より、少しでも情報が周囲に伝わることを願っている。本当に優しい男だ。

 報道されていないが、先週末にそんなことがあったようだ。チャリティーとは何だろうか、とこちらも考えさせられた。週が明けると、T―岡田は何食わぬ顔で大阪市舞洲地区の室内練習場で自主トレを再開した。自画自賛するようなことはなく…そんな男だ。(オリックス担当 鶴崎唯史)

続きを表示

2018年12月13日のニュース