【石井一久 クロスファイア】大谷の投球に生きる メジャー屈指「2614回転の直球」体感

[ 2018年5月23日 09:30 ]

エンゼルス・大谷
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 近年、MLBはデータ解析の進歩により、いろいろな数字で野球を楽しませてくれる。例えば、打球をキャッチできる確率。外野の守備位置を毎回インプットし、打球の角度、方向、スピードなどから瞬時に「キャッチできる確率は36%」などとはじき出す。「確率36%」の打球を捕球すれば、ファンは「凄い」と称賛するし、捕球できなくても「まあ、仕方ない」となる。「もう一つ」考える楽しみが増えた。

 投手でいえば、1分間あたりの回転数は、昨年ぐらいから日本球界でも注目されるようになってきた。先日、エンゼルスの大谷がメジャー屈指の剛腕、アストロズのバーランダーに4打数無安打3三振に抑えられた時、その直球を「品がある」とコメントした。メジャーはボールを動かす投手が多く、ムービング系の球を「汚い直球」と呼ぶ打者もいるが、バーランダーはその正反対。芸術品のようなきれいな回転の真っすぐを、大谷はそう表現したのだろう。

 メジャー平均は2200回転だが、バーランダーは先発投手では1位の2614回転。重力に逆らって回転数が多いということは、打者にはホップして浮き上がってくるように感じる。バーランダーのような投球を、「打者・大谷」として体感できる。これは二刀流の特権でもあり、本当に参考になったと思う。

 単純に球速だけなら、今季メジャーデビューしたカージナルスの21歳の救援右腕ヒックスが、20日の試合で105・1マイル(約169・1キロ)を計測した。これは現在の計測システム導入以降では、ヤンキースのチャプマンに並ぶメジャー最速タイだそうだ。ひと昔前までは「100マイル(約161キロ)」は選ばれた人間だけが踏み入れる領域だったが、最近はマイナーには100マイルを投げる投手が何人もいると聞く。ここ1、2年で「170キロ」の壁を破る投手が出てくるのは間違いない。

 大谷にとって、メジャーにはまだ見ぬモンスターがいっぱいいる。出会った時には、大谷が成長する上での調味料になってくれるだろう。しかし、170キロはどれだけ速いのか…。公道ではないので、スピードはどんどん出してほしい。 (本紙評論家)

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2018年5月23日のニュース