ソフトB内川 運命変わった杉村コーチとの出会い わずか5センチのメンテナンス

[ 2018年5月10日 08:48 ]

パ・リーグ   ソフトバンク3―0西武 ( 2018年5月9日    メットライフD )

現在はヤクルトで巡回コーチを務める杉村氏(左)。内川は移籍後も師の元を訪ねては打撃談義に花を咲かせている
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 「安打製造機・内川」の誕生は今から10年前の08年だった。レギュラーに定着できず迎えた8年目。同年に横浜(現DeNA)に加入した杉村繁氏(60=現ヤクルト巡回コーチ)が打撃を根本から変えた。引きつけて捉える広角打法。わずか5センチの違いが飛躍につながった。

 内川にとって運命的な出会いであり、野球人生のターニングポイントだった。杉村氏は08年に横浜の育成総合コーチに就任。大矢監督の要請で1軍に同行していた。内川は当時8年目。打撃不振に苦しみ、開幕1軍の当落線上にいた。3月中旬。オープン戦が雨天中止になり、本拠地の室内練習場だった。

 内川 どこが悪いんですかね。

 杉村コーチ ポイントがちょっと前すぎる。広角に打ったほうがいい。

 当時の内川は前でさばき、引っ張って長打を打つのを美学、長所にしていた。04年の巨人戦での3打席連発も全て左越えだった。真逆の考え方である。杉村コーチは「自分の理論をひっくり返されたというぐらいの顔をしていた」と振り返る。納得しない内川にフォークなど落ちる球種を投げる投手が増え、崩されやすいことを説明した。さらに右打ちがうまく、ボールを引きつけて広角に打ち分ける打撃の方が合っていることを伝えた。

 内川自身も確実性に欠ける打撃がレギュラーに定着できない要因だと分かっていた。「ずっとやるんだったら付き合うぞと言ったら、即答で“じゃあやります”と」。杉村コーチいわく、映像や写真で見ればわずか5センチの世界。それでも「本人の感覚では1メートルぐらいの差がある」と言う。ミートポイントを手前にするために取り組ませたのは、7種類のティー打撃。体の正面で打ち、横から来る球を打つ。逆方向にも打つなど、引きつけて打つことを体に染みこませた。これは現在、ヤクルト・山田哲への指導につながっている。

 この年、内川は右打者最高打率・378をマークし、初の首位打者を獲得。「杉さんは首位打者のタイトルを獲るきっかけをつくってくれた。出会っていなかったらバッティングは伸びていなかったと思う。本当にいいタイミングでいい人に出会った」と感謝した。 (後藤 実穂)

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