ダル“最高性能”へあくなきチューンアップ、そして揺るがぬ信頼

[ 2017年9月4日 07:12 ]

ナ・リーグ   ドジャース2―7パドレス ( 2017年9月2日    サンディエゴ )

4回途中でKOされ、今季通算11敗目を喫したダルビッシュ(AP)
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 9月2日、サンディエゴのペトコパーク。試合前のブルペンで投球練習を始めたダルビッシュ有投手が、マウンド傾斜の左足を踏み出す位置に印をつけて、投げた後、正確にそこに踏み出せているか丁寧に確認していた。普段はこんなに神経質じゃないのに「なぜ」と思っていたら、試合後にインステップを直そうとしているのだと明かした。

 「初回は踏み出しの足を左バッターボックスの方に向かって出そうという意識だった。この前のブルペンのときにインステップ(クロス)しまくっているから、変な話、こっち(左)に向かっていけば真っすぐ出せるんじゃないかと」

 試合前のブルペンで印をつけ、体に覚え込ませているのに、それでも誤差が出る。

 前日にもこう話していた。

 「自分の思っていることとやっていることが違っている。脳がバグって、真っすぐ出す感覚でも違う方向に出る。それがトミー・ジョン手術の後はずっとあった。直すには誤差を自分の中で埋めていかないと」

 プレーオフを1カ月後に控えての細かい修正作業。そもそもの発端は8月19日のデトロイトだった。その3日前のホワイトソックス戦、ダルビッシュは6回3失点も、三振を2個しか取れなかった。レンジャーズ時代のビデオをひと通り見たド軍のリック・ハニーカット投手コーチが、手術前と手術後の投球フォームの違いを指摘、元に戻してみてはどうかと提案した。

 それに本人も同意、8月27日のブルワーズ戦に向けて早速準備した。

 「手術後は、肘を気にしながら投げていた部分があった。もともと(肘を下げて)横振りの投げ方をするんですけど、かなり縦振りになっていたので、スライダーとかが思うようにいかなかった。元のスライダーを投げるのと、変化球を元のクオリティーに戻すということで、今はかなり横振りにしようとしています」

 データで見ると、平均のリリースの位置はホワイトソックス戦に比べてブルワーズ戦は高さが11センチ低くなり、36センチ三塁側にずれた。角度がつき、実際、威力のある球になったが、一方で制球が効かなかった。7奪三振も、球数は95球で5回で降板した。

 「僕の場合はもともと肘が下がる方が球威がある。ただあれだと、ミスが出てしまうし、ミスの幅が大きい。いくら良い球を投げたところでね」

 8月29日からアリゾナ遠征、ここでは3日間の滞在中に2度もブルペン練習をしたし、ブルペン練習のなかった日も、ブルペンの傾斜を使ってキャッチボールをしたり、外野でエース左腕クレイトン・カーショー投手相手にキャッチボールをした。その日は合計でなんと1時間も投げている。

 「アリゾナは正直疲れていました。こんなに投げて次投げれるのかなと」

 フォームの問題は1つ解決したと思ったら、また別の問題が出てくる。頭に浮かんだアイデアやイメージをすぐに試さずにはいられないのだろう。

 「肩の高さと肘の位置を修正したんですけど、今度はインステップがひどくなっている。今まで1回の変更でここまでの幅というのはないので、意識しなければならないポイントが多すぎる。投げながらそれを全部押さえるのは難しい。一個一個の練習の中で意識しなくても済むようにつぶしていく。そのプロセスにあるので大変です」

 努力にもかかわらず、9月2日のパドレス戦はメジャー最短3回0/3での降板となった。イニング数でいえば、結果は悪化している。

 しかしながら、デーブ・ロバーツ監督は「たくさんのゴロが野手の間を抜けていっただけ。結果はともかく正しい方向に向かっている。ユー(ダルビッシュ)はMLBで既に多くの成功を遂げてきた投手。きっとやってくれる」と変わらぬ信頼を口にした。

 ド軍がダルビッシュを獲得したのは10月のプレーオフでカーショーとともに先発ローテーションの核となるトップクラスの先発投手が必要と考えたから。クローザーのケンリー・ジャンセン投手は獲得が決まると「フェラーリが来た」と大歓迎だった。

 「ドジャースというか、投手コーチも僕だったら(フォーム修正が)できると提案してきたんだと思いますし、自分もできると思うので。頭で想像したものを体で表現するというのは自分が一番得意とする部分。ちょっとずつやっていけば」

 必要なのは最高級車の高い性能。ド軍とダルビッシュはあと1カ月、チューンアップを進めていくのである。(奥田秀樹通信員)

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2017年9月4日のニュース