ソフトＢドラ１正義　理想は１３年のマー君「あの姿。揺るぎない」

「本物のエースに！」と色紙に記し東尾氏と笑顔を見せる田中
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　侍ジャパンのメンバーがＷＢＣへの準備を進めるキャンプで、未来の日本代表入りが期待される若い力も鍛錬を積んでいる。「次世代の侍」をスポニチ本紙評論家が直撃するインタビュー。第１回はソフトバンクのドラフト１位・田中正義投手（２２＝創価大）に本紙評論家・東尾修氏（６６）が話を聞いた。黄金ルーキーが見据える目標は「本物のエース」だ。　（構成・鈴木　勝巳）

　東尾　昨秋のドラフト会議では５球団が競合。結果、ソフトバンクという強いチームに入った。

　田中　指名していただいて、一回ホッとして。それから“相当、選手層が厚いチームだぞ”というのは、１１月ぐらいにふと冷静になった時に思いましたね。

　東尾　競争はよりいっそう激しい。

　田中　でも、本物にならないと。どうせ本物になるんだったら、強いチームでなった方がいい。ローテーションで回るためには本物にならなきゃいけないな、というプレッシャーは感じています。

　東尾　キャンプ初日のブルペン投球を見させてもらった（※１）。今の一番の課題は？

　田中　コントロールです。大学生なら、最後に決め球でアウトコースを狙って、ちょっと高く浮いても空振り取れるんです。それがプロではどうなるかな、と。

　東尾　スポニチに初日の投球の連続写真が載った。自分で見てどう？

　田中　もうちょっと下（半身）が粘ってほしかったかな…。自分は股関節の強さで調整するタイプ。もうちょっと強いボールを放っていければ、下のバネ、股関節の粘りも出てくるのかなと。

　東尾　まだ入団したばかり。その段階で股関節の意識というのはなかなか聞かない。

　田中　大学２年ぐらいの時に感覚をつかんで。ここさえはまれば、上（半身）は意識しなくてもボールはいく。変化球も小手先で曲げるのではなく、しっかり下を使って投げられるよう取り組んでいます。

　東尾　武器はコンビネーション。フォークの握りは…。チェンジアップ系なんだ。俺は指が短かったけど、長いなあ（笑い）。

　田中　球速も１４０キロ弱ぐらい。真っすぐと同じような感じで落ちてくれるので。

　東尾　さて、「本物」を目指すプロ人生が始まった。

　田中　長くやるためには、活躍しないとできない。４０歳を超えても、と思っています。工藤監督が一番の僕の見本（※２）。いろいろ吸収できたらな、と思います。

　東尾　太く、長くだね。工藤監督は自分の体のことにも人一倍詳しかった。

　田中　体のことを知るのは当たり前だと思います。アンテナを張っていると自然と入ってきますよね、そういう情報が。例えば一冊の本を読んだとしても、そういうことに関心のない人が読んでも何も入ってこない。

　東尾　ちょっと早いけど３年後、２０年東京五輪への思いは？

　田中　侍ジャパンに入って、戦力になれるような投手になりたいなとは思っています。

　東尾　日本でやる意味は大きい。

　田中　東京でやる。普通のオリンピックとは違う。出たいですよね。

　東尾　アメリカ行きは？意識はある？

　田中　夢はあるんです。ワールドシリーズって言うじゃないですか。果たしてどんなものなのか。好奇心。あのマウンドから見るのはどんな景色で、何を感じられるんだろう…という興味です。

　東尾　最後に。色紙には「本物のエースに！」と書いた。監督からすれば、毎年２００イニング投げてくれるのが一番ありがたいよ（笑い）。

　田中　そうですね。最近の“本物のエース”は、（楽天での）田中将大投手だと思うんですけれど。（２４勝０敗だった１３年に）２００イニング、投げましたよね（同年は２１２投球回）。僕が思う本物は、あの姿。揺るぎない、ですよね。

　◆田中　正義（たなか・せいぎ）１９９４年（平６）７月１９日、神奈川県生まれの２２歳。上末吉小１年時に駒岡ジュニアーズで野球を始める。創価高では１年夏に背番号１をつけるも、右肩痛で外野手に。甲子園出場なし。創価大で投手に再転向し、３年春〜４年春のリーグ戦で５６イニング連続無失点を記録した。２年時の全日本大学選手権で３勝を挙げ特別賞。３年時には大学日本代表に選ばれ、ユニバーシアードの金メダルに貢献。１メートル８６、９０キロ。右投げ右打ち。

　※１　東尾氏はブルペン投球で、投げ終わった右腕が左の脇の下に深く潜り込む点に注目。「球持ちが長い証拠」と分析した。体重移動の際の左肩の使い方も評価した。

　※２　工藤監督は８１年ドラフト６位で西武入団。ダイエー、巨人、横浜、西武と移籍して１０年までプレーした。現役最終年は４７歳で、実働２９年は山本昌（中日）、中嶋聡（日本ハム）と並ぶプロ野球歴代１位。