【内田雅也の追球】バッテリーと野手 心もつないだ会心のシフト

[ 2016年8月3日 14:11 ]

<D・神>8回2死一、三塁、筒香(左)を遊ゴロに打ち取った岩貞(左から2人目)

セ・リーグ 阪神6―2DeNA

(8月2日 横浜)
 阪神の勝因には2―2同点とされた8回裏2死一、三塁で筒香嘉智の中前に抜ける快打を事前に敷いていたシフトで防いだ好守がある。

 遊撃手・鳥谷敬が二塁ベース手前まで右に寄り、そして深く守っていた。打球は猛ゴロで2バウンドし、鳥谷は二塁ベース寄りでさばき、一塁送球して仕留めた。

 「普通ですよ」と内野守備走塁コーチ・久慈照嘉は話した。「打球傾向が出ていますから。筒香の左方向はゴロで三遊間を抜ける打球はない。ほとんどフライかライナーになります。完璧に捉えられたら仕方がないですから、ショートはあの位置になりますね」

 平然としており“してやったり”の感慨はない。統計に間違いがないと感じられたのが、この夜の1打席目の中前打だった。二塁ベース寄りに守っていた遊撃手・北條史也のすぐ頭上をライナーで越えていった。シフト通りで久慈は“やはり”と確信を得たわけだ。

 「明確にシフトを敷ける打者はそんなに多くない。筒香は昔の松井(秀喜=当時巨人)のような感じですから。不調の時はまれに左方向を意識した打撃をしますが、今の筒香ならね」。7月に16本塁打を量産した好調さも頭にあった。

 ただ、このシーンでシフト的中以上に驚いたのが岩貞祐太―原口文仁バッテリーの勝負姿勢だ。

 筒香を打席に迎えた時、横浜スタジアム記者席のモニター画面は三塁ベンチの作戦兼バッテリーコーチ・矢野燿大が指で四角を作った後、上下左右に両腕を振るしぐさを映し出していた。原口への「ボールを散らしていけ」との指示だろう。敬遠ぎみの四球と予感していた。一塁手ゴメスもベースにつかず、一塁走者はノーマーク。二盗されたら敬遠だったろう。

 初球スライダーは外角低めにボール。ところが2球目、同じスライダーがストライクとなって「勝負か」と驚いた。そして1ボール1ストライクからの外角高め速球(恐らくストライク)をはじき返されたのだった。

 だから、久慈は言う。「(適時打を)防げたのはバッテリーが逃げずに勝負して、しかも(ストライクゾーンの)四隅に放ったからですよ。野手も配球や制球を信頼して位置取りし、予測しますから」。シフト成功には投手・捕手と野手の心のつながりもあったと言えよう。こちらの方は会心である。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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2016年8月3日のニュース