福留、北條のセーフティバントが暗示する“何とかする”姿勢

[ 2016年7月1日 09:50 ]

<神・D>2回裏無死、バントの構えから見送る福留(投手・久保康)

セ・リーグ 阪神0-3DeNA

(6月30日 甲子園)
 【内田雅也の追球】阪神の4番に座る福留孝介が2回裏先頭、初球にセーフティーバントの構えを見せた。見送りはしたが、それほど、この夜のDeNA先発、久保康友は好調で、攻略が難しいと予感していたのだろう。1回裏は5球で3者凡退だった。

 福留がセーフティーバントの構えを見せたのは6月18日ソフトバンク戦(甲子園)の第2打席、4回裏1死無走者での初球以来だ。あの試合も千賀滉大―サファテに零敗を喫している。福留には相手投手の好不調を感じ取る嗅覚があるようだ。それが打席での姿勢に現れ出るのだろう。

 3回表先頭の北條史也は初球、実際にセーフティーバントを試みた。三塁線ファウルとなったが、何とか生きようとする姿勢は伝わってきた。

 何しろ久保康の投球はタイミングを取るのが難しかった。緩急差を巧みに使っていたからだ。

 一つは速球と変化球の球速の緩急がある。さらにセットポジション(久保康は走者なしでもセットから投げる)に入ってからの間合いの長短、足を上げる時間の長短、そして投球フォームにまで緩急の差がついていた。

 「打撃はタイミングだ。投球はいかにタイミングを狂わせるかだ」とは大リーグ左投手で歴代最多363勝をあげたウォーレン・スパーン(ブレーブスなど)がよく口にしていた名言である。40歳でも21勝をあげ、44歳まで現役を続けたスパーンは、球の速さばかりが投球ではないと言いたいのだ。老練な投球を演じたこの夜の久保康に通じるところがある。

 逆に言えば、打者はいかにタイミングを取るかという問題に行き着く。タイミングは個人の感性や特徴があり、教えるのは難しい。ただ、力の問題ではないのは確かだ。

 3安打零敗を喫した試合後、打撃コーチ・片岡篤史は「ちょっと振り過ぎ」と漏らしたのは、この点だろう。技には技で対抗したい。

 「確かに久保はコントロールが良かった。しかし、いいところに投げられたから打てませんでした、では……。反対方向に打つとか、工夫をしないと。何とか食らいつく、と言うかね……」

 安打は北條2本に福留1本。北條は外角フォークに食らいついた遊撃左への内野安打と追い込まれてから反対方向を狙った右前打。セーフティーバントを見せた2人だったのが暗示的である。何とかしようという姿勢が実ったのだと記しておきたい。=敬称略=(スポニチ編集委員)

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2016年7月1日のニュース