球児「意味ある四球」の選択肢もあったのでは?

[ 2016年6月25日 09:30 ]

<広・神>8回、新井(右)に決勝の2点適時三塁打を打たれた藤川

セ・リーグ 阪神2-4広島

(6月24日 マツダ)
 【内田雅也の追球】打たれたのがボール球だっただけに余計に悔しさが募るだろう。

 2―2同点の8回裏に登板した阪神・藤川球児は無死二塁から2死一、二塁まで踏ん張った。代打・新井貴浩に1ボール2ストライクと追い込み、勝負にいった高め釣り球の速球を右中間にはじき返された。前進守備の外野手の間を抜ける決勝の2点三塁打となった。

 新井を迎えた場面で投手コーチ・香田勲男がマウンドに歩んでいる。藤川との会話の内容はわからない。ただし、“三塁”が空いている。“一塁”の書き間違いではない。走者が進もうとも満塁になろうとも勝ち越しの本塁を渡してはいない。打順は9番投手。代打とまた勝負すればいい。

 このように四球も含めて、打者2人で1死を奪い、無失点でしのぐことを想定していたはずだ。

 春季キャンプで臨時投手コーチを務めた江夏豊が投手陣への講演で「ピンチでも開き直るな」と伝えていた。あの1979年(昭和54)日本シリーズで9回裏無死満塁をしのぐ「江夏の21球」がある。あの当時も「何とかしてゼロで抑えることしか考えていなかった」と体験談を語っている。そして実際、無死三塁から無死満塁まで2つの塁を四球で埋めてまで、無失点でしのいでいた。

 クローザーの修羅場をいくつもくぐり抜けてきた藤川である。新井を2球で2ストライクと追い込み、後はもうストライクは不要だとわかっていた。フォークが低めワンバウンドで外れ、次は高めボール球で釣る。ボール球連投で打ち取る算段が崩れたのだった。

 四球は何も無駄ばかりではない。7回2失点と踏ん張った先発の藤浪晋太郎も4個の四球を与えている。特に1回裏は1死三塁から四球、捕逸、四球と荒れ、不安の募る立ち上がりだった。それでも最少失点にとどめて踏ん張った。

 四球を与えた打者は丸佳浩とルナの3、4番。もちろん四球は避けるべきだが、ストライクを取りにいけば一発長打の危険もある。あの四球は“痛打を避けた”とも解釈ができる。四球に意味があったのである。

 リーグ戦再開の初戦。143試合のシーズン折り返し点の72試合目の節目だった。首位・広島とのゲーム差は8・5まで広がった。阪神としては1リーグ時代を含め、逆転優勝したことのない大差だ。つまり、今から挑むのは史上初の道のりである。=敬称略=(スポニチ編集委員)

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2016年6月25日のニュース