大商大躍進の秘密 プロ3人衆が語る“野球部で培った人間力”

[ 2016年1月2日 12:32 ]

(左から)広島・岡田明丈、オリックス・近藤大亮、楽天・吉持亮汰は母校・大阪商業大学で活躍を誓う

 昨秋のドラフト会議で大商大から、岡田明丈投手(22)が広島1位、吉持亮汰内野手(22)は楽天から2位で指名を受けた。オリックス2位の近藤大亮投手(24=パナソニック)も13年度卒業生だ。硬式野球部は昨年、関西六大学野球連盟の春秋リーグ戦を連覇し、全日本大学選手権で8強入りするなど躍進した。揃って甲子園出場経験はないが、プロ野球選手という大きな夢をかなえた3選手が大商大の魅力を語った。(取材・構成 吉仲 博幸)

 ―プロ入りが決まって率直な感想を。

 近藤 オリックスは地元の球団ですし、うれしく思っています。高い評価をいただいたので責任も感じます。

 岡田 広島から高い評価で指名していただいたので、期待を裏切らないような活躍をしたいと思っています。

 吉持 2位という高い評価を受けたので1年目から即戦力としてチームに貢献できるよう、しっかり準備したいです。

 ―契約金の使い道は何か決めていますか?

 近藤 野球部の富山監督と話し合って必要なものを寄贈できればと。酸素カプセルなどがいいかなと思いますが、これから考えます。

 岡田 吉持と2人で打撃ケージを一つずつ寄贈しようと考えています。後輩にはリーグ戦でぜひ3連覇を達成してほしいと思います。

 ―3人は高校時代に甲子園出場がなく、特に際立った実績もありません。富山監督との出会いで才能が開花したと思うのですが、監督の存在は大きかったですか?

 近藤 恩師だと思っています。最初はすごい人が来たなという感じ。威圧感といいますか。富山さんからまず礼儀作法を叩き込まれました。グラウンドでのごみ拾いもそう。そんなことが野球につながるのかと当時は思ったのですが、人として当たり前の事を実践することで結果がついてきました。野球につながったのかなと思います。

 岡田 とても厳しい方ですし、妥協を許さない方。技術面では地下足袋を履いて投球練習する方法を教えていただきました。下半身の粘りが生まれ制球の安定にもつながりました。リリースポイントも安定しましたし、球速アップにもつながったと思います。

 吉持 今の自分があるのはすべて富山監督のおかげです。4年時は自分が中心選手としてやっていかないといけない立場でしたので、気合を入れるために何回も丸坊主になりました…。

 ―教えで「ため」になっていることは?

 近藤 やはり気持ちの面ですね。闘争心だったり、根性だったり。何が何でもプロに行くんだという思いで練習を積んできました。

 岡田 期待してもらってマウンドへ送り出してくれるのに、なかなか結果が出せない日々が続きました。そんな時に“おまえがおったら(試合で)使いたくなるから、もうどっかへ行け”と言われました。その言葉は今でも一番悔しかったのですが、一番の励みにもなりました。

 吉持 4年春に打撃力がアップしました。遠征先で監督さんの部屋に呼ばれ、午前0時すぎまでご指導いただいた。タイミングの取り方を学んだことで、おもしろいようにヒットが出るようになり、首位打者になることができました。

 ―3人はいつ頃からプロを意識しましたか?

 近藤 大学1年です。監督と出会い“プロを目指せ、絶対に行けるからオレを信じろ”と。その思いで頑張れました。1年目から頼りにされ、すごくうれしかった。

 岡田 監督に言われたことを一生懸命に取り組んだ結果、3年生くらいから結果が出始めました。注目され、初めてプロを意識できるようになりました。

 吉持 大学2年生くらいから上のレベルでやりたいと考えていました。監督から上を目指せと言われ、人より練習しましたし、意識を高く持つことができました。

 ―今、大切にしている言葉はありますか?

 近藤 監督がよく言う「練習は精神の安定」ですね。本当にその通りだなと思う。自分は小心者なので、誰よりも練習しないといけない。

 岡田 僕も「練習は精神の安定」です。練習しないと、自分自身が保てない感じなので、練習は誰よりもやろうと今も心掛けています。

 吉持 僕は「信頼」です。練習しなければ、周りからも信頼を得られない。監督、チームメートから信頼されるのはたくさん練習してこそ。

 ―改めてプロ初年度の目標を聞かせて下さい。

 近藤 0からのスタート。まず1軍に定着し、優勝に貢献できる投手になりたい。個人的には新人王を狙えるような活躍を。任された場所で結果を出したいです。

 岡田 リーグ優勝に貢献できるようカープの先輩方からたくさん学びたい。前田健投手は(おそらく)抜けますが、黒田投手がいます。多くを吸収し早く1軍に上がって2桁勝利を挙げたい。必要とされるポジションでしっかり投げたいです。

 吉持 1年目から1軍の試合に出て活躍することが目標です。遊撃手で試合に出て、最終的には盗塁王を目指したいと思います。

 ―お互い交流戦などで対戦する機会があれば、楽しみですね。

 近藤 大商大出身の選手で球界を盛り上げたい。それは富山監督への恩返しにもつながる。グラウンド上で会えるのは本当に楽しみ。岡田と投げ合うようなことがあれば、おもしろいやろうなと思います。吉持とは同じパ・リーグ。もう僕の対策を練っているようです。

 吉持 初球にセーフティーバントをしようと思います。練習の時に一度対戦しましたが、その時は三振でした。球が速かったです。

 近藤 僕は吉持の膝付近を狙おうと思っています。

 岡田 僕もそういう機会があれば、ぜひ2人と対戦してみたい。

 ―現役学生や今後、大商大に進学しようと考えている学生、野球部に入りたいと思っている高校生らにエールを。

 近藤 大商大はしっかり野球に打ち込める環境にあります。どんな時も目標に向かって頑張ってほしい。野球に限らず、大学では明確な目標とビジョンを持って努力し続けることが先へつながる。何事も諦めず、続けることが大事です。

 岡田 野球部に入れば、富山監督が熱い指導をしてくださる。それにどれだけ食らいついていけるか。何事も粘り強く取り組むことが結果に結びつくと思います。

 吉持 大学4年間でやってきたことは、社会人になってからもつながると思います。大学での4年間は、何事にも一生懸命になって取り組んでほしい。生活面も野球も全力で取り組むことで何かを得ることがあると思いますから。

 ◆大阪商業大学硬式野球部 1953年創部。75年春に3年生の斉藤明雄(元大洋)を擁してリーグ初優勝(旧関六)を飾り全日本大学野球選手権で準優勝。翌76年も同選手権で準優勝に輝く。82年、リーグ解体により関西六大学野球連盟に移籍。新リーグで初代王者に輝くと3季連続優勝。リーグ戦優勝回数は旧リーグを含め13度。主なOBに清川栄治(西武2軍投手コーチ)、佐伯貴弘(中日守備コーチ)、谷佳知(元オリックス)、中井哲之(広陵高監督)らがいる。富山陽一監督は09年11月に就任し、13年明治神宮大会4強、15年大学選手権8強。福山博之(楽天)、桂依央利(中日)ら就任後に計7人のプロ選手を輩出。

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