ロッテ京大くん 卒論と“二刀流”で合同自主トレ参加へ

[ 2014年11月29日 07:20 ]

白バイにまたがり高砂市のイメージキャラクター「ぼっくりん」と敬礼する田中

 気遣いは無用――。京大初のプロ野球選手としてロッテからドラフト2位で指名された田中英祐投手(22)が28日、来年1月上旬に始まる新人合同自主トレから練習フル参加を誓った。大学の卒業論文を優先させて参加免除という球団の方針に対して「秀才右腕」は、自主トレに参加しながらパソコン持参で卒論を完成させる考えだ。この日は生まれ育った兵庫県高砂市の高砂警察署で一日署長を務め、地元市民の安全に一役買った。

 りりしく引き締まった顔は、すでにプロのそれになっていた。契約を12月2日に控えて、一足早い「プロ初仕事」。ロッテではなく、警察のユニホームを着た田中はきっぱりと言い切った。

 「できる限りは他の新人と一緒に1月から(練習に)参加したい。新人合同自主トレにいい状態で臨み、キャンプも初日から行けるように(卒論に)取り組んでいる」

 京大から初めて誕生するプロ野球選手。その最初の難関が自主トレでもキャンプでもなく、卒論だった。提出期限は来年3月。球団としては「秀才右腕」ならではの特例措置で卒業をサポートする方針で、林信平球団本部長も「12月から1月は論文で一番忙しい時期になる。新人合同自主トレは参加できなくてもやむなしですね」と話していた。だが、決して恵まれたとは言えない国立大の練習環境で鍛えてきた田中。秀才の裏にある反骨心が自主トレ免除の特別措置を無用とした。

 京大工学部に在籍する田中の卒論テーマは「SFA(表面力測定装置)における水和構造の逆計算理論」。超難解な論文とあって、10月24日の指名あいさつからここまでの1カ月間、猛烈な追い込みをかけた。長い時には1日7時間。「先生と話して書く」という作業を続けてきた。「早く提出したいので今、力を入れている。現段階では6割程度。大枠をやってしまえば、パソコンがあれば修正できる。12月までに大枠をやりたい」

 年内に大枠を完成させて来年1月から新人合同自主トレに参加。同時に埼玉・浦和の合宿所にパソコンを持ち込み、練習しながら論文も修正をしていく。1月までに完成しなければ、キャンプにもパソコンを持参することになる。「できることを自分のペースで一つ一つやることが大事」。今は論文作成の傍ら、毎日ランニングと筋力トレーニング、キャッチボール。股関節の柔軟性と可動域を上げることがテーマだという。

 どこまでも貫く文武両道の精神。田中はすでにプロとしての確かなスタートを切っていた。

 ▼ロッテ・伊東監督 卒論で忙しいと聞いていたが、自主トレに参加したいと考えてくれているなら、それは立派なこと。どんな球を投げるのか早く見てみたい。

 ▽SFA(表面力測定装置) 「Surface Force Apparatus」の略で、さまざまな物質の表面間に働く分子レベルの相互作用力(表面力)を直接測るための装置。2つの表面間に働く微少な力の大きさを表面間の距離の関数として自動測定することを目的に01年に日本電子レーザー株式会社が開発した。これにより、物質の表面・界面研究だけではなく、新薬の開発や評価、バイオテクノロジー分野、分子レベルでの微細加工などが可能となり、医学や生物学の分野でも利用される。

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