菊池にメジャー6球団来た!緩急自在4回零封

[ 2009年7月13日 06:00 ]

<花巻東・久慈>第一球に超スローボールを投げた花巻東・菊池雄星

 【花巻東9―0久慈】152キロ左腕の夏が幕を開けた。今センバツで準優勝した花巻東の左腕エース・菊池雄星投手(3年)が12日、春夏連続の甲子園目指して岩手大会の初戦に臨んだ。先発した菊池は最速150キロの直球を軸に4回1安打無失点の貫禄投球を披露。ネット裏は今秋ドラフト1位候補間違いなしの左腕目当てに、大リーグからも6球団が視察に訪れる盛況ぶり。春から一回り成長した菊池が悲願の全国頂点を目指してフル回転する。

【試合結果


 悲願の頂点に向けた最初の1球。マウンドの152キロ腕が選んだ球はなんと大きな山なりの超遅球、50キロのスローボールだった。
 「野手陣の緊張をほぐすためです。先発を言われた1週間前から決めていました。わざわざ直球のサインに首までふったんです」
 結果はボールとなったが、球場全体に張り詰めていた空気が一気に和んだ。ただ、ここからが菊池の真骨頂だった。切れのある直球を軽快なテンポで投げ込んだ。先頭の大沢を148キロ直球で空振り三振。3回2死からはこの日最速の150キロを記録して鈴木から空振り三振を奪った。緩急差は驚異の100キロ。4回2死から遊撃内野安打を許し、この回限りでマウンドを降りたが4回1安打無失点で6奪三振。49球中直球が約8割を占める圧巻の内容だった。
 「忘れ物を甲子園に取りに行く」。今センバツ決勝で清峰・今村との投げ合いに敗れた菊池が定めた目標だった。春までは取り入れていなかった肩周りの筋トレ、握力強化トレなどを導入。強気一辺倒だった投球も、今村のメリハリを付けたスタイルを取り入れた。この試合も走者を出した4回はセットポジションで直球を130キロ台後半に抑えて「抜くところを抜いて次の試合も見据える」。ライバルではない。菊池にとっては周囲のすべてが“教材”だ。いいところをどん欲に取り入れる吸収力、柔軟性が左腕の成長を支えている。
 さらに大事にしているのが“イメージ”。菊池は1年時から「人の嫌がることを率先してやらなければエースになれない」とトイレ掃除を続けているが、そのトイレには「いつでも全国優勝を意識できるように」と06年夏、甲子園優勝の早実・斎藤(早大3年)の写真が張り付けてある。掃除のたびに写真を見て、自分がその場所に立つイメージを繰り返してきた。
 昨夏岩手大会は準々決勝の盛岡中央戦に2番手で登板して6回2失点で敗れた。それが大会唯一の登板。佐々木監督はその失敗を繰り返さないために「雄星にはフルで投げるつもりでいろと言ってある」と今夏はエースにすべてを託す覚悟だ。
 「きょうは80点。フォームが突っ込んでいましたから」と左腕は勝ってかぶとの緒を締めた。まだずっと先にある悲願まで負けるわけにはいかない。その瞬間まで菊池は走り続ける。

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2009年7月13日のニュース