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達人の雰囲気を持つ空手家・山崎照朝さんの思い出 ビール瓶は本当に手刀で切ることができる

[ 2025年6月23日 18:38 ]

山崎照朝氏(2016年1月、上海で撮影)
Photo By スポニチ

 空手家の山崎照朝さんが亡くなった。77歳という年齢での訃報は残念でならない。わたしは、ボクシング担当をしていた1990年代の数年間のお付き合いしかなかったが、とても印象に残る武道家だった。

 空手の知識が皆無だったわたしは、ボクシング担当になってから、東京中日スポーツで担当されていた山崎さんのことを初めて知った。「極真の龍」と呼ばれた一流の空手家であること、力石徹のモデルであること、数ある逸話を知り、興味も湧いて、ご本人によく昔の話をうかがった。「そんな大したことないよ」。自慢が嫌いな方だった。

 精かんなマスクと長身で鍛えられた肉体を持つ山崎さんは、武道を極めた達人の雰囲気がある方だった。ボクシング興行後に記者仲間と一杯やった後、路上で酔ったサラリーマンに絡まれたことがある。後方にいた山崎さんはズイと一歩前に出て「おい、やめとけ」と静かに言った。オーラがあったのだろう。捨てぜりふを吐いてサラリーマンは去っていった。

 「空手家は本当にビール瓶を手刀で切れるか」という疑問にも、親切に答えてくれた。以前、あるボクサーの合宿の取材の際、海辺にあったお好み焼き大の石を手刀で真っ二つに割ったことがあると聞き、その話の延長で聞いた。

 「割れる石は線が見える。ビール瓶も何10本も割っていると、横に線が入って見えることがある。そこを狙うと、スパッと切れる」

 活字で読んでも信じられなかったが、山崎さんが言うのだから、本当なんだと思った。同時に、本物は凡人には到達できない世界を知っていると、身をもって知った。スポーツ記者は、その競技のトップ選手の取材をする機会が多い。その選手だけが知る「凡人には到達できない世界」に、あらためて強い興味を持った。

 「おい、鈴木。ちょっとコーヒー飲み行こう」。お酒をあまり飲まない山崎さんに、時に誘われた。あの、ぶっきらぼうで、はにかみがちな山崎さんの表情はもう見られないが、脳裏にはすぐに浮かんでくる。忘れられない方との出会いとは、そういうものなのだろう。(鈴木 誠治)

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