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重岡銀次朗 “無判定試合”で王座獲得失敗…無念の不完全燃焼「こんな終わり方をするなんて」

[ 2023年1月7日 04:30 ]

プロボクシング・IBF世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦   同級5位・重岡銀次朗≪無判定試合≫王者ダニエル・バラダレス ( 2023年1月6日    エディオンアリーナ大阪 )

3R、偶然のバッティングにより無効試合になりコーナポストに力無く寄りかかる重岡 銀次朗(撮影・後藤 正志)
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 “人生で一度も負けたことがない男”が、悪夢の結末に泣いた。世界初挑戦の重岡銀次朗(23=ワタナベ)はIBF世界ミニマム級王者ダニエル・バラダレス(28=メキシコ)相手に優位に立っていた3回、偶然のバッティングで試合がストップ。王者が頭の負傷と続行不可能を訴え、試合が成立する4回終了前だったためにIBFの規定で「無判定試合」となり、プロ9戦目での世界王座奪取を逃した。

 赤コーナーに座り込んだ王者は痛みを訴えて泣き、挑戦者は青コーナーにうずくまって悔し泣きした。重岡が強烈な左ボディーを叩き込んだ3回終盤、バラダレスの頭が重岡の左頬に激突。試合は中断し、医師の検診を受けた王者は「耳が聞こえない」「足がふらつく」とアピールし、コーナーを何度も振り返った。

 「嘘(うそ)だろ、頼むよ…」。重岡は腕を広げて再開を要求。関係者も5分休憩後の再開を促したが、レフェリーは続行不可能として試合を止めた。試合結果は当初、「3回2分48秒負傷引き分け」と発表され、その後にIBFルールの「無判定試合」と変更された。

 試合を止める判断を下せるのはレフェリーだけ。重岡陣営はバラダレスの試合放棄と抗議したが、裁定は覆らなかった。故意のバッティングを疑う声もあり、重岡は「故意かどうか一瞬で分からなかったが、自分も痛くないぐらいの当たりだった。(続行不可能は)おかしいなと。戦意喪失したのでは」とボディーを効かされたバラダレスが試合続行を嫌がったのでは、と指摘。スピードも反応も勝っていると手応えをつかんでいただけに、「不完全燃焼です。試合中に“これはいける”と思っていたのに、こんな終わり方をするなんて。この悔しさをどこにぶつければいいか分からない」とやるせない表情を浮かべた。

 立会人のベンジャミン・ケイルティー氏(オーストラリア)は試合後、ダイレクトリマッチ(直接の再戦)をIBF本部へ要請すると明かした。「今日の試合で自信がついた部分はある。世界王者になるのがちょっと遅くなっただけ。ぜひ再戦したい」。悲劇の中、不敗を継続した重岡は“リベンジ”を誓った。

 《渡辺会長「試合放棄では」》ワタナベジムの渡辺均会長は無判定という裁定について「(王者の)試合放棄ではないのか?」と抗議したことを明かした。「VTR検証は採用されないことが決まっていたので裁定が覆らないとは思ったけど、さほどダメージがあるようには見えなかった」と説明。IBFのスーパーバイザーからは非公式ながら「再戦勧告をする」との言葉もあったという。興行を主催した亀田興毅氏は再戦が認められた場合に再びプロモートすることを明言した。


 《過去同じ会場で不可解な裁定が…》同じ会場で13年12月3日に行われた世界戦でも不可解な裁定があった。IBFとWBAの世界スーパーフライ級王座統一戦でWBA王者のリボリオ・ソリス(ベネズエラ)は計量に失敗。WBA王座を剥奪されたが、試合ではIBF王者の亀田大毅に判定2―1で勝利した。IBF立会人のリンゼイ・タッカー氏は前日計量時に「負ければ亀田は王座を失う」と説明していたが、試合後は「亀田の王座は保持される」と発表。混乱を招いた。

 ◇重岡 銀次朗(しげおか・ぎんじろう)1999年(平11)10月18日生まれ、熊本市出身の23歳。ジュニア時代はU15全国大会V5など約40戦全勝。アマ時代は高校5冠など57戦56勝で、1敗は兄・優大(ワタナベ、前日本ミニマム級王者)との兄弟対決を避けるための棄権。18年9月プロデビュー。19年7月にWBOアジア・パシフィック・ミニマム級王者(防衛2)、22年3月に日本同級王者(防衛1)。身長1メートル53の左ボクサーファイター。

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