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八重樫 玉砕…怪物ロマゴンでも足が前に「やっぱり強かった」

[ 2014年9月6日 05:30 ]

9回、ゴンサレス(左)の左アッパーを食らう八重樫

プロボクシング WBC世界フライ級タイトルマッチ12回戦 同級1位ローマン・ゴンサレス TKO9回2分24秒 王者・八重樫東

(9月5日 東京・代々木第2体育館)
 WBC世界フライ級王者の八重樫東(31=大橋)は無敗の“怪物”ローマン・ゴンサレス(27=ニカラグア、帝拳)に9回2分24秒TKOで敗れ、4度目の防衛はならなかった。ゴンサレスはミニマム級、ライトフライ級に続く世界3階級制覇となった。

 打たれても打ち返す。膝が崩れかかっても踏ん張り、誰もが対戦を嫌がるゴンサレスとの真っ向勝負を貫いた。9回に力尽き「やっぱりロマゴンは強かったです。ハンパじゃないっすよ」と八重樫。勝機を見いだせないままキャンバスに沈む完敗後、控室で長男・圭太郎くん(8)らの顔を見ると、緊張感から解放されたのか涙がこぼれた。

 1回こそ足を使って相手に的を絞らせなかったが「(ポイントが取れないため)この展開は続けられない。何とか前に出ようと思った」と闘争本能が足を前に運ばせ、2回からは果敢に立ち向かった。打ち合いは相手が上手。前、横、下のあらゆる角度からパンチを顔面に浴び、2回を終わった時点で両まぶたは腫れ上がった。3回にカウンターの左フックをもらってダウン。ひるまず応戦し「打たれたら打ち返す。根本的な部分でしか勝負できなかった」とゴンサレスを下がらせる場面もつくった。9回に連打から左アッパーを食らって2度目のダウン。壮絶な死闘を、レフェリーは止めざるを得なかった。

 逃げない男だ。WBA世界ミニマム級王者だった2年前はWBC同級王者の井岡一翔と戦って敗れた。世界中のライバルから避けられ、ここ5試合ノンタイトル戦が続いていたゴンサレスの対戦オファーも「逃げたって言われたくないですからね」と即OKした。「無謀な挑戦」と言われながらも、首回りや下半身を徹底強化。それでも相手の破壊力は想像以上で「めっちゃ怖かったです」と正直に打ち明けた。

 試合後は観衆4000人から拍手が送られた。「プロなんで負けたら意味がない。戦ったから偉いとかはない」。だが、ファンは挑戦を評価している。今後については「僕は何回も負けているので(引退は)関係ない。まだ頑張ります」と再起を誓った。ファンの支持がある限り、チャンスは必ず来るはずだ。

 ▼内山高志(WBA世界スーパーフェザー級王者) 八重樫選手とゴンサレス選手ではパンチの質が違った。初回はうまく足も使っていて、イライラさせることができればと思ったけど、2回以降はハイになって打ち合ってしまい、打たれすぎてダメージがたまってしまった。

 ◆八重樫 東(やえがし・あきら)1983年(昭58)2月25日、岩手県北上市生まれ。黒沢尻工でボクシングを始め、3年時に総体優勝。拓大時代は国体優勝。05年3月プロデビュー。06年4月に日本人最速タイの5戦目で東洋太平洋ミニマム級王座獲得。11年10月WBAミニマム級王座獲得。12年6月、井岡一翔とのWBA・WBC王座統一戦で判定負け。今年4月にWBCフライ級王者の五十嵐俊幸に判定勝ちして2階級制覇。身長1メートル61、リーチ1メートル63。右ボクサーファイター。家族は夫人と1男2女。

 ▼八重樫―ゴンサレスVTR 八重樫は敗れたものの、強敵に全力を尽くす姿は胸を打った。開始からゴンサレスのスピード、パワーに劣勢。3回には左フックでダウンを奪われる。それでもひるまず接近し、打ち合いを挑んだ。右を軸に抵抗もしたが、9回に強烈な左で2度目のダウン。ここで力尽きた。ゴンサレスはパンチの破壊力、中に入れさせないうまさで一枚上だった。

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2014年9月6日のニュース