【内田雅也の追球】これが「甲子園の野球」

[ 2025年4月9日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神0-1ヤクルト ( 2025年4月8日    甲子園 )

<神・ヤ(1)> 藤川監督(左)と握手を交わすLINDBERGの渡瀬マキ (撮影・須田 麻祐子)
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 0―0均衡が破れたのは8回表だった。好投の阪神・才木浩人が2死一、二塁からドミンゴ・サンタナに右翼線二塁打を浴びて失点した。

 この回先頭、中村悠平にフォークが浮いて三遊間安打されたのが疵(きず)となった。直前の7回裏1死一、二塁で梅野隆太郎に代打・原口文仁を送り、捕手が坂本誠志郎に代わっていた。
 0―0で捕手を代えるのはリズムや呼吸が変わるため迷うところだが、監督・藤川球児は梅野が2打席三振でもあり勝負に出たのだろう。

 0―1敗戦。これが甲子園での野球である。広くて打球の飛ばない。1点を巡る攻防となる。

 阪神が甲子園で試合をするのは今季10試合目で初めてだった。3月9日のオープン戦以来1カ月ぶりだった。その間、主に人工芝のドーム球場で試合を行っていた。

 この日も無失策で、今季の失策はわずか1個。12球団最少だ。その堅守は甲子園でやれてこそ本物だ。土で不規則バウンドがあり、風も吹き抜ける。先人たちはその甲子園を愛し、愛されて戦ってきたのである。

 甲子園開幕の試合前イベントでLINDBERGの渡瀬マキが『every little thing every precious thing』を歌った。監督・藤川球児現役時代の登場曲である。歌のタイトルは「どんなささいなことも、かけがえのないこと」という意味だ。まるで投手・守備が重要視される甲子園野球の標語のようではないか。この日は明らかなミスはなく戦って、敗れた。

 もちろん「負けに不思議の負けなし」である。江戸時代の剣豪、平戸藩主・松浦静山が書き残し、野村克也がよく使った言葉である。

 やはり佐藤輝明が欠けたのが痛かった。体調不良らしく、試合前練習にも姿がなかった。8回裏無死一塁で代打で登場したが空振り三振だった。

 ただし、あの場面はピンチバンターではなかったか。送りバントで1死二塁として近本光司、中野拓夢にまず同点を託すわけだ。体調不良という佐藤輝の一打を望む勝負手はロマン主義に過ぎてはいなかったか。

 藤川はオープン戦を終えた際、開幕へのテーマを「コンディションとモチベーション」と口にした。やる気は十分だが、体調を整える準備と用兵に疑問が残った。やはり負けても不思議ではなかった。 =敬称略=
 (編集委員)

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