【能見篤史氏 直撃キーマン(下)】 福留に学んだ大山「次を見つめて常に前を向く」
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森下の“後見役”に――。阪神・大山悠輔内野手(30)と、本紙評論家・能見篤史氏(45)が初対談。今季、藤川監督から5番打者として構想される背番号3は、3年目で4番の重責を担う森下のサポートを誓うとともに、自身も継続して打線の軸を務めることを宣言した。また、目指すべき選手像について「渋いなと思われたい。“いてくれたら安心する”という存在」と掲げるなど、かつてともに戦った先輩と野球談議に花を咲かせつつ、打率3割の期待にも力強く呼応した。(取材・構成=石崎 祥平)
(上)からの続き
能見 今回、侍ジャパンで一緒にプレーできて、うれしいよ。
大山 前回選ばれたのが6年前なので久しぶりですね。
能見 2試合しかないので、いいものを吸収して帰ってほしいし、いろんな刺激があると思う。3月の頭に海外のチームと試合して影響はない?
大山 野手に関してはないと思います。他球団の選手と一緒に野球をやる機会は少ないので、そこで野球をやるだけでも勉強になると思います。とにかく無駄な時間にしたくないですね。前回は若かったので、今回はまた違った雰囲気になると思います。
能見 他球団の選手からしたら阪神でずっと4番を打っていた人間だし、悠輔に聞きたいことがある選手が多いんじゃないかな。例えば、試合の中のシチュエーションで何を意識しているとか、得点圏で何を狙っていますか?とか。そういう質問は多そう。
大山 その時に思ったことを話そうと思います。言うことによって自分の再確認にもなりますし、自分のためになる時間にしたい。たぶん最年長なんですよね。知っている選手もいて、吉川尚輝(巨人)とかは同級生です。
能見 他球団のクリーンアップと比べて、悠輔はずっと阪神で4番を打ってきた。当事者しか分からないプレッシャーがある。そこまで重圧を感じてやらないといけないもの?とか感じたりは。
大山 そこはあまり踏み込めないというか、踏み込まないところではあります。
能見 例えばDeNAの牧選手なんかはチャンスでも“よしよし打順が回ってきた”と思っているような感じはする。一方で岡本選手(巨人)は、プレッシャーがのしかかっている感じに見える。阪神も特殊だよね。今回に限らず、他球団の選手と答え合わせもできたらいいと思うけど。
大山 そうなんですよね。阪神の選手はチャンスで回ってきたら“生きるか死ぬか”みたいなところがありますから(笑い)。
能見 それは背負った人間しかわからないもんね。他球団のクリーンアップが調子が悪かったとして、チャンスで打席に入ったら、心中を察したりすることも当然あるよね。
大山 確かに“大変やろうなあ”と思う時はありますね。僕も同じ感情になったりするので。他球団の選手がどう思っているか分からないですけど、ここぞの場面で力を抜こうとしても抜けない場面がある。“力んでいるな”と見える時もある。そこで自分自身も“こういうところで力を抜かないといけないな”と勉強になる事は多いです。他球団の選手を見て。常に力を抜く練習はしています。
能見 (短期決戦の)ポストシーズンに限らず、シーズン中でも力を抜こうと思っていても抜けないことがあるの?
大山 それもありますね。チャンスになればなるほど甲子園は特に歓声もそう、異様な雰囲気になるので。
能見 それは期待値の高さだよね。
大山 重心がフワフワと上がってくることを自分で感じます。常に練習の時から自分の気持ちをコントロールできるように意識したりします。いざ、その場になってみないとつくれないプレッシャーというのもありますけど。
能見 大変だよね、阪神の4番は。本当にそう思う。
大山 能見さんには、いろいろ助けていただきました。
能見 背負いたくなくても、「背負わなくてもいいよ」と言われても、プレッシャーを阪神の選手は背負う。若い時は負のオーラしかない時もあったもんね(笑い)。
大山 そこで負のオーラを出してしまっていた自分も反省しないといけないですよね。
能見 いや出るて!
大山 福留さんもそうでしたけど、「そういう顔をしててもしょうがないから、いい顔してやれよ」という言葉をいただいたりとか。マイナスな気持ちの時こそ、頑張って前を向こうと思っていました。次を見つめて常に前を向く。それを見て学びましたね。
能見 そのプレッシャーに押しつぶされて落ちていく選手もいる中で悠輔らしく野球をやってほしい。楽しんで、やっていいんじゃないかなと思う部分もある。
大山 仕事と野球を楽しむという事は、どっちも10割でやらないといけないと思っています。楽しむことって結局「勝つ」こと。ファンの皆さんを喜ばせることだと思う。勝つからこそ、いい思いを提供できるのかなと。
能見 球団によっては、和気あいあいとやっているチームもあるし、「勝って楽しむ」という試合が今年はたくさんあってほしい。
大山 ゲームがヒリヒリする展開で“力が抜けているな”と思った時がいい状態で試合に入れている証拠だと思います。
【取材後記】
終わって時計を見て驚いた。対談は約30分にも及んでいた。その濃厚な内容に、隣で聞いていて時間を忘れるくらい引き込まれた。
2人の間にあったのは“師弟関係”とも言うべき距離感だった。大山に対して勝手に寡黙でクールな印象を抱いていたが、時に軽妙な小ボケも交えつつ本音を語る姿には、“新鮮さ”さえ覚えた。そんな対談の中で大山は「能見さんには、いろいろ助けていただきました」と明かした。若くして背負った「阪神の4番」という重責に押しつぶされそうになった時、絶妙なタイミングで声をかけてくれたのが、能見氏だったという。投手目線から「俺だったらこう攻める」などと分析してくれた助言は、今も大山の野球人生の中で生き続けている。
新たに5番として臨む今季。大山はシーズン中に何を学び、何を得るのか。また、取材で答え合わせをしたい。(石崎 祥平)
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