記者が球審で「ストライク!」 巨人西舘、日本ハム細野ら 23年で「一番凄い」投手は…

[ 2024年1月2日 23:11 ]

細野の球をジャッジする柳内記者
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 昨年1月に始動した企画「突撃!スポニチアンパイア」では11年から6年間、NPB審判員を務めた記者がブルペンで投球をジャッジ。23年は10人のアマチュア投手を動画、記事で特集した。23年の総括として各部門で「一番凄かった」投手を記したい。

 ☆直球部門 東洋大・細野晴希投手(日本ハム1位)
 直球は文句なしに細野投手がNo.1。ミットにボールが収まってからも押し続けるような力強さがあった。プロではカウントによって投じる球種が打者に「分かっている」状態でも投げないといけない場面もある。細野の直球は「分かっていても前に飛ばせない」と感じさせるほど強烈な伸びがあった。プロでは制球力を懸念する声もあるが、アバウトでも全力で直球をゾーンに投げれば、そうそう打たれないのではないか。一部の投手にしかできないストロングスタイルを細野ならば貫くことができると信じている。


☆変化球部門 中大・西舘勇陽(巨人1位)
 ジャッジする前後で一番印象が変わった投手が中大の西舘。最速155キロの直球が注目を集めていたが、直球も速い「変化球投手」と見方を変えることになった。力強く腕を振り、縦に鋭く落ちるカーブも一級品だが特筆すべきはカットボール。140キロ前半の高速で動き、スライダー、スプリットの中間の軌道で斜めに鋭く落ちる軌道は唯一無二。カウント球でも決め球でも使える宝刀はプロでも重宝しそうだ。


☆制球力部門 横浜・杉山遥希(西武3位)
 当企画で横浜・杉山の取材が一番体力を使った。球審は「ボール」より声を張り、大きなジェスチャーでコールする「ストライク!」の方が圧倒的に体力を使う。杉山は投球のほとんどが「ストライク!」。そして、ボール球でも打者席から本塁間のわずかな隙間を突き、球審は精神的にも息つく暇がない。右打者の内角直球でストライクを取り、次は同じコースからスライダーで空振りを奪う。そして次は外角に逃げるチェンジアップ。全ての配球に高校生離れした「意図」があった。キャリアの浅い高校生にプロで即戦力を求められることはない。それでも24年の後半戦、1軍デビューしても不思議はないほど完成度が高かった。


☆特殊球部門 東海大菅生・日当直喜(楽天3位)
 東海大菅生・日当はもっと騒がれていいと思った。楽天にドラフト3位指名を受けたが「豊作」とされた23年ドラフトでなければさらに上位で指名を受けていたかもしれない。1メートル90、105キロ。巨体の日当は指先に繊細な感覚を持っている。ブルペン入りする前から「フォークに注目してほしいです」と決め球を宣言。これが凄かった。まずはブレるような軌道で落とす「ナックル系」。続くボールは「縦スラ」のように鋭く曲がり落ちるフォーク。さらに次は正統派の真っすぐ落ちるフォーク。そして仕上げは、シンカーのように左打者から逃げるフォーク。器用に握りを変え、これほど多彩にフォークを操る投手はプロ野球でも見たことがなかった。「フォークだけで6、7種類を投げ分けている」と日当。プロでは七色の宝刀を武器にストッパーとして大成する未来が見たい。


 その他にも凄い投手ばかりだった。総合的には青学大の下村海翔(阪神1位)がNo.1であり、幕張総合の早坂響は140キロ後半の動く直球が特徴だった。大船渡の佐々木怜希はホップするような軌道の直球、仙台育英の仁田陽翔は凄まじい球威が魅力。慶大の外丸東真は日本一となる明治神宮大会直前に取材。直球は130キロ後半でもスライダー、ツーシームで「バックドア」と「フロントドア」を使い分ける投球術が光っていた。

 そして24年も「ジャッジしたい」と思わせる逸材がそろう。法大のエースとしてドラフト1位指名を目指す篠木健太郎、非公式ながら164キロを投じた東北福祉大の堀越啓太、八戸学院光星の洗平比呂、知徳の小船翼…。今年も「突撃スタイル」で魅力を伝えていきたい、と思う。
(元NPB審判員、アマチュア野球担当記者・柳内 遼平)

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