イチロー氏 高校生指導「壁に向かう時の原動力は」質問に金言 感謝の色紙は「シアトルの宝物箱の中に」

[ 2022年12月4日 18:25 ]

練習後、部員と記念写真に納まるイチローさん
Photo By 代表撮影=共同

 マリナーズで会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏(49)が4日、静岡・富士高で選手指導を行った。3日から訪問し、2日間指導した。イチロー氏が高校生を指導するのは、20年の智弁和歌山、21年の国学院久我山、千葉明徳、高松商、今年の都新宿に続き6校目。

 指導2日目となった4日も、フリー打撃を生徒の前で実演するなど精力的に指導にあたった。フリー打撃後には生徒からの要望もあってブルペンへ向かって投手も指導。自ら内野ノックも打った。「体力の続く限り」と打ち続けたノックは449スイング。前日は元気がなかった生徒たちが声を出して仲間を励まし、最後は涙ぐむ生徒もいた。

 ノックを終え、イチロー氏は「今、その感じ、昨日の最初より、全然、違う。みんなで励まして、チームの感じがするでしょ。この感じ、忘れないで。勉強でも大変だと思うけど、壁に立ち向かっていけるように、今日のこの感覚を忘れないで」と言葉を残した。

 「努力をして壁に向かっていくとき、原動力は」と質問され「僕の場合はずっと野球をやってきて、好きなものだから。シンプルに壁がきたらそれから逃げようとしなかったし、立ち向かっていった。負けたこともいっぱいあるけど。やっぱり、自分が、本当は好きなものがいい。分かりやすく立ち向かっていける。でも、そうじゃない、それに向かわないと行けないときは、今、やっていることは、自分がベストの選択じゃなかったかもしれないけれど、だけど、自分が選択したもののはずだから。だとしたら、自分の決断に責任を持って、向かって行く。だから、決断できないで悩んでいる人はいっぱいいると思うけど、その決断を自分でしてほしい。そうしたらそこに責任を持てると思う」と語りかけた。

 さらに「向かって行く姿を周りは見ているから。そうすると、知らない間に、周りって、自分に対しては寛容だけど、人に対しては厳しいから。だから、みんな、自分に対していつも厳しくあってほしい。そうすれば、将来、どの世界に行っても、人を引っ張っていける人間になれると思います。みんな、そこを目指してほしい。期待しています。よく頑張りました」とエールをおくった。

 中澤主将から「この時間の中でイチローさんから教わったことをまた、チームの中で話しあって、全部、吸収して、一気に全部やるのは無理だと思うので、一つ一つ、積み重ねていって、来年の夏は。今回は、こういう振興活動を通してきてもらったんですけど、来年の夏の結果はイチローさんの耳にも届くように、みんなで頑張っていきます」とお礼の言葉を述べ、イチロー氏を中心に生徒全員で富士山をバックに記念撮影した。最後に全員からののメッセージが書かれた色紙を手渡され「シアトルの宝物箱の中に入れます。一生、大事にします」と喜んだ。

 富士高は文武両道の進学校で、野球部は部員が2年生9人、1年生10人。平日は午後4時ごろまで授業があり、下校は午後8時と決まっているため、実質練習に充てられるのは2時間半ほどだ。今年4月に稲木監督が就任後、地域への野球普及活動も積極的に行い、6月、10月と保育園児相手に活動。3日も、イチロー氏登場前に1時間ほど普及活動を行い、小1から小4の子ども約20人に生徒が投げ方、打ち方などを手取り足取り教えていた。

 イチロー氏は訪問の経緯として、前回の都新宿に続き「やはり学業も頑張りながら好きな野球を続けているだけでなく、幼児や小学生を対象とした野球の普及活動に熱心に取り組んでいると聞いたから。彼らが感じたことを、さらに次の世代に繋いでくれるのではないかという期待もあり、今回も自らの意思で訪問を決めた」とした。

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