「体育会系」って言葉に騙されたらあかん 話し合いで民主的に運営するのがホンマの体育会やで

[ 2022年9月1日 08:00 ]

鳥内秀晃氏
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 【名将・鳥内秀晃の人間話 頼むでホンマ】「体育会系」って言葉に、世間の人は、どんなイメージを持ってるんかな。監督や先輩の言うことに逆らわず、絶対服従するような感じで捉えている人も多いんちゃう?オレから言わせたら、全然ちゃうで。それは「軍隊式」とか「権威主義」っていうもんで、みんな意味をはき違えてるわ。

 うちのチームは「関西学院大学体育会アメリカンフットボール部」っていうのが正式名称で、名前の通り、立派な体育会やわ。ただ、オレらのいう体育会って、どこまでも民主的で、みんなで意見が言い合える場所やねん。そんな環境やからこそ、人間的にも成長できて、人格形成にも役立つといえるわな。もちろん、チーム内に監督と選手、先輩と後輩のような上下関係はあるで。けど、チームを強くするためやったら、下級生かて自分の考えを言うし、指導者や上級生も聞いてあげるのが普通や。それで上級生から理不尽な体罰を受けることもあらへん。常に建設的な意見を出して、最善の方法を考えてきたから、うちは、ずっとトップレベルをキープできてるんやと思うわ。

 結局な、自分の意見を言うと、責任が生まれるし、サボられへん。この行動を繰り返すことで学生は成長できるし、組織かて強くなれるんよ。企業は就職活動の時に「体育会系が欲しい」って言うけど、言葉の真意はどこにあるんやろか。体力があって、動き回れて、上に従うだけの人材を求めるだけやったら、指示待ち人間を募集してるのと同じことやで。

 こういうタイプが入社して、年齢が上がっていったら、上司の顔色をうかがうヤツばかりになって、会社にとっても全くメリットがないわ。職場の問題は大企業だけやないで。従業員10人以下の小さい会社では、パワハラが当たり前のように横行してるって聞くわ。未だに江戸時代の丁稚奉公みたいな関係が、経営者と従業員の間に残ってるんやろな。

 今の若い子がこういう体質に馴染めず、すぐに会社を辞めてまうのも理解できるわ。官僚かて、同じやん。本来なら国民の方を向いて仕事せなあかんのに、身を守るために、政治家や上司の言うことばっかし聞くやろ。自分の意見を通そうとするような正義感のある人間はやってられへんで。優秀な官僚がどんどん離職するのは、国や国民にとっても不幸やし、日本が世界で勝負できひん理由は、このあたりにもあるんちゃうかな。

 この国の未来を考えたら、やっぱり教育を見直さなあかん。いつまでも偏差値重視で、モノを覚えているヤツが賢いってシステムはどうなん。これからは、自分の主義主張をしっかり喋れる人間、論理的思考ができる人間を増やしていくのが一番大事やと思うで。幼稚園、小学校の時から車座でいろんなテーマを話し合って、意見を発信できるようにならへんかったら、国際社会で通用する人材なんて出てこへんわ。いつも言うてるように、資源のない日本は人が宝やねんから、教育、研究のあり方を考え直す時期が来てるな。頼むで、ホンマ。(関西学院大アメリカンフットボール部前監督)

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2022年9月1日のニュース