【荒磯親方 春場所総括】白鵬の修正力、鶴竜の地力…両横綱健在

[ 2020年3月24日 07:00 ]

<春場所・千秋楽>優勝を決めた白鵬は満足げな表情で懸賞を受け取る(奥)=撮影・後藤 大輝
Photo By スポニチ

 史上初めての無観客開催で、白鵬が強さを発揮しました。何度も優勝してきている横綱ですが、こういう「初めて」という場所では新しい目標ができる分、いつも以上に強さが際立ちます。阿武咲、正代に敗れましたが、しっかりと修正できていました。鶴竜は前半の相撲を見て“大丈夫かな”と思っていましたが、後半にギアチェンジして、久しぶりに強い横綱が戻ってきました。両横綱とも、まだまだ若い力士の壁になっています。

 11勝を挙げて大関昇進が確実になった朝乃山は、ここ数場所と同様に安定感がありました。私は、技や勝ち方が確信に変わったとき、大関に昇進できると見ています。朝乃山は右四つが確信に変わってきたことで大関につながりました。ただ、ここ一番で爆発力を出さなければいけないところで一定の力になっていたところもありました。今場所は両横綱に敗れましたが、これからは勝負だというときにいかにやれるかが大事になってきます。バカ力を出すには稽古しかなく、今まで以上に稽古をすることが求められます。もう少し左から攻める力も必要になるでしょう。

 負け越した貴景勝はリズムが悪かったのもそうですが、どこか体に悪いところを抱えていたのでしょう。それでも、大関は10番勝つことが求められます。阿武咲戦のように、相手をはじき飛ばす目の覚めるような一撃が貴景勝の魅力ですが、この爆発力を常に出せるか。安定して10番勝つには、もう一ひねり二ひねり、考えていかなければなりません。

 若手では25歳の隆の勝、23歳の阿武咲が目立ちました。隆の勝は今が一番乗っていける年齢です。突き押しに加え、右を差して“よしっ”と思えるようになれば、さらに強くなっていくでしょう。阿武咲は落ち着き力強さが良くなってきました。アドバイスを求められたとき「わちゃわちゃしないこと」と伝えましたが、その通りの相撲を取っていました。大栄翔戦で攻めているときに一回沈み込むあたりも素晴らしいものがありました。平幕に落ち着いている力士ではなく、自分を信じて頑張ってほしいと思います。 (元横綱・稀勢の里)

続きを表示

この記事のフォト

2020年3月24日のニュース