筑波大 医学部ドクター川瀬が箱根“切り開く” 唯一の5年生、経験と頭脳で導く下克上シード

[ 2019年12月29日 05:30 ]

箱根のキーマン(3)

医学部で学んだ知識を生かし箱根駅伝に挑む川瀬(中央)
Photo By スポニチ

 26年ぶりに箱根路へ帰ってきた筑波大。今大会の全エントリー選手で唯一の5年生、川瀬宙夢はスポーツ整形外科医を志す医学生だ。日本選手権女子800メートル入賞の広田有紀(秋田大)ら医学部ランナーの存在を励みにしてきた24歳は、「自分も陸上と勉強を頑張りたいと思っている人に、良い刺激を与えられたら」と語る。

 サッカーをしていた小学生の時に、ケガ人に駆け寄る救護班を見てスポーツドクターに憧れを抱いた。大学は勉強一本の予定だったが、刈谷高3年で初出場した高校総体の3000メートル障害で予選落ちし「このままでは終われない」と競技続行を決意。両立が可能な筑波大を選んだ。

 「実習を1回休むだけで進級に関わる」という医学部での文武両道は、簡単ではない。今年11月の1万メートル記録会の前日と前々日は8つのテストを受け、2日間で14時間は試験会場の机に向かっていたという。全体練習に参加できない日も多い。そんな中でも時間をつくって、他学部の選手に引けを取らない距離を走り込み、全日本インカレの3000メートル障害4位入賞など結果を残してきた。

 専攻分野を生かせる強みもある。ケガや貧血の対処法など「勉強しやすい環境」で学び、仲間と共有。4年生の実習では遺体を解剖し「本当の体の中身を見て体や筋肉のつくりを学ぶことで、自分やチームメートのアライメント(骨や関節の配置=異常が発生すると故障しやすい)を考えることができた」という。

 最大の目標はあくまでも来年の日本インカレ3000メートル障害で優勝すること。そのために「箱根駅伝というビッグコンテンツに乗っかるのは凄く良いこと」と話す。4年時には主将を務めた経験から「今年は一人一人がチームを引っ張る意志が見える」とチーム状況も把握している。あとは誰よりも長く味わった4年分の悔しさを、シード権獲得につなげるだけだ。

 ◆川瀬 宙夢(かわせ・ひろむ)1995年(平7)9月15日生まれ、愛知県刈谷市出身の24歳。富士松中―刈谷高。高校3年時に3000メートル障害でインターハイ出場。19年日本インカレ3000メートル障害4位入賞。ハーフマラソンの自己ベストは1時間4分54秒、1万メートルは29分54秒50。1メートル75、58キロ。

 ▽筑波大と箱根駅伝 前身の東京高等師範学校(東京高師)時代、1920年(大9)の第1回大会に出場。明大、早大、慶大の4校で争われ、東京高師は往路1位、復路2位で最初の総合優勝を飾った。第2回大会で復路1位、第5回大会で往路1位を記録したが、その後は東京文理大―東京体育専門学校―東京教育大―筑波大時代を通じて優勝はない。1912年ストックホルム五輪のマラソンに日本人アスリートとして初出場し、箱根駅伝の創設に尽力した“いだてん”金栗四三は東京高師のOB。

 ▽最近の医学部アスリート 今年の陸上日本選手権の男子400メートル障害で、名大医学部5年の真野悠太郎が6位入賞。東京五輪出場を目指し、文武両道を貫いている。サッカーでは山形大医学部が今年の天皇杯に山形県代表として4年ぶり3度目の出場。1回戦で桐蔭横浜大に0―8で敗れた。ラグビー界では、昨年度の大学選手権8強入りした慶大のSO古田京主将が同部初の医学部生だった。トップアスリートとして医師を目指している選手には、AO入試で独協医大合格が決まった18年世界柔道女子78キロ超級金メダルの朝比奈沙羅(パーク24)、リオ五輪7人制ラグビー日本代表で19年W杯日本代表のWTB福岡堅樹(パナソニック)らがいる。

続きを表示

この記事のフォト

2019年12月29日のニュース