稲垣、魂のスクラムで世界最強FW粉砕 歓喜の涙?「泣いたことないですよ」

[ 2019年9月29日 05:30 ]

ラグビーW杯1リーグA組   日本19―12アイルランド ( 2019年9月28日    エコパ )

<日本・アイルランド>試合後、涙をみせる稲垣(右)をねぎらう田村(撮影・吉田 剛)
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 スコアシートに8人の名は刻まれない。場内ビジョンに大写しになったのは、トライを挙げた福岡。だが後半18分の歓喜の瞬間をもたらしたのは、相手の圧にびくともしなかったスクラム。プロップ稲垣は「(強豪国の)ティア1を押せる自信が付いた」と胸を張った。

 前半18分、相手ボールのファーストスクラムで、いきなりペナルティーを取られた。だが稲垣が「(1本目から)完全に勝っているイメージがあった。(反則は)レフェリーの解釈の問題」と語るように、自信は揺るがなかった。同34分には逆にペナルティーを奪うと、8人は労をねぎらい合うように手をかわし合った。マイボールは6本全て確保。選手交代しても、総重量で上回る相手を圧倒し続けた。

 4年前は元フランス代表のマルク・ダルマゾ・コーチの下で強化。南ア戦で、ペナルティーでスクラム選択するほどの力量と自信を築いた。だが16年に指導体制が変わり、選手もノウハウもリセット。就任した長谷川慎コーチの下で、土台づくりから始まった。

 稲垣は「3年間、方向性がぶれたことは一度もない」と語ったことがある。単なる力勝負ではなく、相手の力を2、3割無効化して優位に立つ。そのために細部にわたる決めごとを定め、チェックポイントは100を上回る。ロシア戦は相手スクラムが想定外に弱く、崩して反則を取られるリスクを考慮し、力をセーブした。この日は1本目からフルスロットル。世界2位の相手を圧倒した。

 試合終了後、仲間らと抱き合って歓喜の涙を流した稲垣は「泣いたことないですよ」とちゃめっ気たっぷりに否定した後、「今まで取り組んできたことが出た」とかみ締めた。笑わないことで知られる男はその瞬間、笑みを我慢することができなかった。

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