堀島行真 19歳侍モーグラー快挙!デュアルも制して史上初2冠

[ 2017年3月10日 05:30 ]

フリースタイルスキー世界選手権 ( 2017年3月9日    スペイン・シエラネバダ )

男子デュアルモーグル準々決勝 エアを決める堀島行真=シエラネバダ
Photo By 共同

 19歳の堀島行真(いくま、中京大)が世界選手権史上初の2冠を達成した。前日に制したモーグルに続いて、非五輪種目のデュアルモーグルでも優勝を飾った。3回戦では連覇を狙う王者ミカエル・キングズベリー(24=カナダ)を21―14で撃破。決勝ではW杯3勝のブラッドリー・ウィルソン(24=米国)に20―15で競り勝って頂点まで駆け上がった。女子では09年猪苗代大会の上村愛子らが2冠を達成しているが、男子では初めて。初出場でモーグル、デュアルともに最年少優勝を飾り、新時代到来を印象づけた。

 デュアルモーグルは一対一の果たし合い。赤と白のウエアに身を包んだ“侍モーグラー”は、コブを切りつける鋭いターン、豪快なエアに、最後まで諦めない根性を持っていた。

 決勝では「気持ちが先走った」と中盤のコブで転倒。ところが相手も直後に転倒し、第2エアを飛べなかった。立ち上がって追い掛けた堀島は第2エアをしっかり決めてゴール。「実力が伴っていないから、きれいな形で優勝できなかった」と反省したが、乱戦の中でしぶとく勝利をつかみ取った。

 初出場初優勝だった前日のモーグルは、国際スキー連盟の公式サイトで「堀島が世界に衝撃を与えた」と紹介された。19歳の若武者は連日の金メダルに「こんなにうまくいくのかという思い。プレッシャーは前日の方が大きくて今日のレースは楽しく滑れた」と涙を拭った前日から一転、はにかんだ笑顔を見せた。

 W杯42勝、今季11戦9勝のキングズベリー(24=カナダ)との3回戦が最大のヤマ場だった。第1エアの着地後はリードを許し、中盤のコブでスピードに乗って猛追。第2エア直前で並んで最後に先んじた。21―14で絶対王者を退けて「踏ん張りどころと思っていた。勝ったからには優勝しないといけなかった」と気持ちも充実した。

 堀島の滑りもキングズベリーの“王者のDNA”を宿している。ジュニア時代に師事したのが06年トリノ五輪エアリアル代表の水野剣氏(38)。水野氏は技術向上のためにカナダ・ケベックのジュニアチームに学び、そこには若いキングズベリーもいた。「カナダや米国は理論をしっかりと学ぶ。そこで世界王者が練習していたことを行真に教えた」と水野氏は言う。体系的なエアの技術を堀島は旺盛な向上心でみるみる吸収していった。

 「自宅から70キロぐらいあるのにチャリで来ていた」。堀島が今も通う三重県桑名市のウオータージャンプ施設「K―air」の浜田聡所長(35)はそう言って懐かしむ。中学生になると往復100キロ以上の道のりを自転車で行き来した。「小学生の頃から大人顔負けのジャンプをしていた。周りの大人と張り合っていた」。情熱を持ち、負けず嫌いだった少年が、今や王者に成長した。

 世界選手権の大舞台でモーグル、デュアルとも最年少での優勝。来年2月の平昌(ピョンチャン)五輪に向けて、キングズベリーが圧倒的な強さを誇っていた時代が変わろうとしている。堀島が変えようとしている。

 ◆堀島 行真(ほりしま・いくま)1997年(平9)12月11日、岐阜県池田町出身の19歳。両親の影響で1歳からスキーを始め、岐阜第一高から中京大に進学。13年2月の猪苗代大会でW杯デビューし、昨季W杯開幕戦のデュアルモーグルで3位。初の表彰台に上がって、昨季は新人賞にも選ばれた。先月18日のW杯田沢湖大会で初めて決勝2回目に残り、モーグルでは自己最高の6位。札幌アジア大会ではモーグル、デュアルモーグルの2冠を達成した。1メートル66、54キロ。

 ▽デュアルモーグル 1人ずつ滑るモーグルに対し、2人同時に滑って一方が勝ち上がるトーナメント方式で行われる。7人の審判が持つ合計35点(ターン審判4人=20点、エア審判2人=10点、スピード審判1人=5点)をどちらが多く獲得するかが勝負。五輪では実施されないが、W杯ではモーグル種目に組み込まれている。

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