貴親方×菊水丸スペシャル対談 新横綱・稀勢は“本来の相撲”見られる

[ 2017年3月7日 10:40 ]

「四股はこう踏むんだ!」と河内家菊水丸(左)に手本を見せる貴乃花親方
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 大相撲春場所(12日初日、エディオンアリーナ大阪)を直前に控え、平成の大横綱・貴乃花親方(44)とスポニチ本紙大阪版レジャー面「珍宝堂」でおなじみの“相撲通”河内家菊水丸(54)のスペシャル対談が実現した。注目の新横綱・稀勢の里や愛弟子の幕内・貴ノ岩への期待、大阪場所担当部長時代、巡業部長となってからの角界について熱く語り合った。

 菊水丸 まず新横綱・稀勢の里への期待は。

 貴乃花 稀勢の里が横綱になったのは、(昨年秋場所に)豪栄道が全勝優勝した刺激が大きかったと思います。同い年で同じ大関で。今回、大阪出身の豪栄道が刺激を受けて2人で切磋琢磨(せっさたくま)して場所を盛り上げてくれたらうれしい。

 菊水丸 巡業部長になって直接指導もしているようですが。

 貴乃花 巡業責任者として指導できる気楽さがあります。普段は各師匠がいるので余計なことをしたらいけない。

 菊水丸 昔から稀勢の里には思い入れがあるようで。萩原で十両に上がった頃から将来の横綱です、とコメントされていたのを見たのですが。

 貴乃花 ちょうど若の里(現西岩親方)の付け人をやってました。体が整っていて、十両に上がってもこの力士は上にいくなと思った。そうしたら、17歳で幕内で勝ち越して。いつも本人に伝えるのは、上がってきた時の一番強い取り口を取ってほしいということ。相撲には3年先の稽古という言葉があります。今すぐできることはないので、継続は大事ですね。

 菊水丸 きょう100回四股を踏んだとか、100回ぶつかり稽古をしたからといって、明日、結果が出るわけではない。

 貴乃花 近年で横綱に昇進した中では、申し分のない勝率ですし、あれだけ期待されていたので、どこか本能的に受け身になって相撲をとってしまい、足踏みしてしまったと思う。(横綱に)上がった今、インタビューを見ると、そういうのも取り払われて、今までの苦労が実になったのかな。これで本来の攻めの形でやれるんじゃないかな、と。4、5回ぐらいは優勝すると思いますよ。無駄なことではなく、稀勢の里にとっても修行だったと思い、その成果を出してもらいたい。

 菊水丸 親方は、稀勢の里がもう少し早く(横綱に)上がると思っていたのでは?

 貴乃花 いやいつまで、というはなかったですね。私は22歳で上がったが、稀勢の里は30歳まで修行して横綱になった。これを本人にしかできない強みに変えてもらいたい。

 菊水丸 明治神宮での土俵入りを見ていると、やっぱり相撲は神事なんだなと思う。

 貴乃花 先の分からない勝負に挑むというのは、神事なんでしょうね。

 菊水丸 弟子の話になると親方は厳しくなると思いますが、貴ノ岩の躍進は相撲ファンを喜ばせてますよね。

 貴乃花 少しずつですが、頭角を現してますね。本来の実力を本場所で出せるようになってきてます。普段の生活でも表情を見ていると落ち着いてきている。

 菊水丸 愛弟子が優勝戦線に加わっていると、燃えてくるものがありますか。

 貴乃花 優勝は結果論ですから。この間(の初場所)は1、2敗だった時に、いい相撲内容でしたから。お互い力を出し切った相撲で。先代(元大関・貴ノ花)が言っていたのは土俵に上がったら、生きざまを見せてこいということ。勝ちたいと思うな、力量を見せてこいと孫弟子にも言っています。

 菊水丸 貴景勝も出てきて、部屋の稽古も活気づいてきましたか。

 貴乃花 関取衆の稽古も部屋で盛り上がって、若い衆にはいい刺激になっている。

 菊水丸 親方にとって大阪の最初の思い出は、少年時代の先代の初優勝(1975年)ですか?

 貴乃花 ハイ、そうですね。ホテルのテレビで見ていいました。かすかな記憶ですが、そのまま泊まったように思います。それから大阪とのご縁が始まりました。

 菊水丸 先代の初優勝が大阪であり、初土俵も大阪で、現役を引退して花道での初めての警備も大阪ですね。

 貴乃花 大阪とはなにかとご縁があります。大阪担当部長にもなりました。

 菊水丸 大阪担当部長になった頃(2012年)は、(前の年に)大阪場所が中止になって、その復活の場所だった。北の湖理事長(当時)が、言葉は悪いですが“(貴乃花親方を)広告塔というか、もう一度、大阪のお客さんに来てもらいたい”ということだったのですか。

 貴乃花 ハイ、修行してこい、と。前任者が理事長ですから。大変さもわかっているし、大変だが、修行してこい、と。

 菊水丸 自ら正面玄関に立ち、写真撮影やサインに応じたりしていた。

 貴乃花 教科書がなかったので、親方修行で何かできないかと思った。チケットも売れない。資金も調達できない。自分の体でできるとこをやるしかないと思った。(吉本)新喜劇にも出させていただいて。

 菊水丸 新喜劇でも四股踏んで。

 貴乃花 (菊水丸)師匠のおかげで吉本興業が応援してくれて、本当に有り難かった。地元を代表する吉本興業の賞があるのは励みになると思います。

 菊水丸 優勝力士には365日分、吉本新喜劇入場券をプレゼントとアナウンスすると場内がわっと沸きます。大爆笑ですよ。

 菊水丸 巡業のPRではないですが、宝塚もあるし、加東市もあるし、巡業も忙しいですね。

 貴乃花 現役力士は体も大きいし、移動も大変だが、いい文化を次の世代に残してほしい。稽古まわしで汗を流す姿を見せてほしい願いはある。

 菊水丸 親方は相撲が大好きなんですね。あんまりこんなこと聞く人はいないと思いますが。

 貴乃花 これしかやっていないので。これで生きていくしかないので。今世に相撲にお世話になってやり残すことがないように。寄与の精神でやり残すことがないようにやりたい。

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