山梨学院大・上田 ロケットスタートで「上」を目指す父子鷹

[ 2016年12月28日 10:30 ]

第93回東京箱根間往復大学駅伝   1月2日往路、3日復路

駅伝 山梨学院大 次男・健太(左)に期待を寄せる上田誠仁監督
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 【箱根に駆ける・1】第93回東京箱根間往復大学駅伝は年明けの1月2日に往路、3日に復路が行われる。箱根連覇中の青学大は10月の出雲、11月の全日本を制し、史上4校目の3冠と3連覇に照準を合わせている。王者が偉業を達成するのか、他校が進撃を止めるのか。「箱根に駆ける」と題して、有力校の注目選手を5回にわたって紹介。トップバッターは、山梨学院大の上田健太(3年)だ。

 駆ける前、上田は文字を書く。今季、知人の勧めで始めた大切な儀式。自分がどういう状況にあるのか、正確に知ることができる。ボールペンで紙にしたためるのは「林」や「森」「田」など簡単な漢字。緊張で最初は字が揺れる。「集中すると、きれいに書ける」。何回も書くうちに心は落ち着き、字は美しくなる。スタートに着く準備が、整う瞬間だ。

 父の誠仁監督は、駅伝シーズンを前に言った。「しっかりチームの流れをつくってくれ」。チームは10月の出雲で2位、11月の全日本は3位。上田は2大会とも重要な1区を担い、区間3位と6位だった。「いい経験ができた」と言う一方で、「もっとチャレンジして、上の方にいかないと」と反省も忘れない。箱根でも1区投入が濃厚。「勢いをつけるのが1区の仕事」。好位置で2区のニャイロ(2年)につなげば、序盤でライバルを圧倒できる。

 前回の箱根は3区を走り、長い歴史を誇る箱根で初めて、同一校の監督、選手としての親子出場を果たした。「10キロくらいで硬くなってしまった。出るのが目標だったので、走り終わった後にホッとした」。区間7位でも、どこか安どしている自分がいた。「前回はつなげればいいという感じだったけど、今度は優勝に導くような走りをしたい」。あれから1年。主力の自覚が芽生えた。

 95年大会以来、22年ぶりの箱根制覇を狙う。「勝ちたい。父を胴上げしたい気持ちが強い」。14日の公開練習、書いてもらった1字には「上」とあった。上田からの連想か、チームが上昇する確かな手応えを表現したのか。上田のロケットスタートで勢いに乗り、総合優勝へ。その時、父の小さな体は、みんなの手で宙に舞い上がる。 (杉本 亮輔)

 ◆上田 健太(うえだ・けんた)1995年(平7)7月5日、山梨県甲府市生まれの21歳。甲府北中で本格的に陸上を始め、3年時に全国大会の1500メートル優勝。山梨学院大付高3年時には全国高校駅伝を制した。父・誠仁監督は順大2〜4年時に5区を走り、2度の区間賞を獲得。母方の祖父・秋山勉氏も東農大の学生として4年連続で箱根路を走った。1万メートルの自己ベストは28分48秒92。1メートル77、54キロ。

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2016年12月28日のニュース