高谷惣亮 ロンドンの雪辱をリオで「あの頃よりも何十倍も強くなっている」

[ 2016年6月15日 10:30 ]

レスリング 男子フリースタイル74キロ級・高谷惣亮

「カウントダウン・リオ」レスリング 男子フリースタイル74キロ級・高谷惣亮

 クワガタといえば黒や赤のものを思い浮かべるが、世界には金色の体色を持つものもいるという。この男の“クワガタ”もリオの地で金色に輝く可能性を秘めている。毎週水曜日掲載「カウントダウンリオ」の今回のテーマは「メダル候補の秘技解剖」。レスリング男子フリースタイル74キロ級代表の高谷惣亮(27=ALSOK)は最大の武器がタックル。独特の「クワガタ型」など多彩なバリエーションを持つその技に迫った。

 この2年間はタックルのスピードと威力を増すため、筋力アップにも積極的に取り組んできた。背筋力は280キロ、スクワットは200キロまで向上。13年末から代表チームをサポートする角一哲児トレーナーは「ともに一般的な選手の目標は体重比2倍。惣亮は普段80キロなので目標は160キロ。それを大きく超えている」と太鼓判を押す。垂直跳びも74センチ。NBA選手の平均が71センチともいわれており、角一氏は「日本のトップアスリートでも70センチを超えてくるのは重量挙げやバレーボール、バスケットボールの選手。それに近い」と語った。

 保坂は受ける側のやりづらさも説明してくれた。「普通の相手なら、あそこまで切れていれば、キャッチされている足が剥がれるイメージがある。高谷さんはグニャグニャついてくるイメージ。完璧に腰を入れて切っているのに切っている感じがしない」。五輪切符が懸かった3月のアジア予選準決勝、この試合でも高谷はクワガタ型で貴重なポイントを挙げた。

 「網野ではずっとタックル練習をしていた。“とりあえず入れ”って」。京都の網野町少年教室で競技を始めた時からタックルは得意技だった。定番の片足、両足、ハイクラッチやローシングルをはじめクワガタ型も気づいたらやっていたバリエーションの一つ。最近では低い構えから飛び込むクラウチング型も身に付けた。多彩さとパワーに、1500メートル走を4分40秒で走りきる持久力もある。高次元でバランスの取れた肉体がマットの上ではじけるのだ。

 前回のロンドン五輪はアゼルバイジャンの強豪と当たり、初戦敗退となった。「代表になっても思ったほどちやほやされなかったし、ちょっとショックでしたよ」。生来の目立ちたがり屋にとって、結果も含めて全てが物足りなかった。スポットライトを浴びるにはやはりメダル。金色ならなおいい。「あの頃よりも何十倍も強くなっている」という言葉を、ぜひそのタックルで証明してもらいたい。

 ※3回戦でムラド・ガイドアロフ(ベラルーシ)を4―0で退けた高谷は準決勝に備えウオーミングアップ場で休んでいたところ、背後から近づいてきたガイドアロフに熱湯を頭にかけられた。ラフファイトで悪名高いガイドアロフはその直後、判定に抗議し、世界レスリング連盟のデュソン事務総長を暴行した。

 ◆高谷 惣亮(たかたに・そうすけ)1989年(平元)4月5日、京都府網野町(現京丹後市)生まれの27歳。網野高―拓大―ALSOK。空手をやっていたが、兄弟の影響で小6からレスリングを始める。12年ロンドン五輪は初戦敗退。※14年世界選手権は銀メダルを獲得し、対戦相手から熱湯を頭にかけられたことも話題に。全日本選手権は11~15年に5連覇、全日本選抜選手権は13~15年に3連覇。趣味はスイーツ巡り、マンガ&アニメ観賞。1メートル77。

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