【精神科医に聞く】5月病を「睡眠」からアプローチ!10の対策と、眠れないときのお助け術
4月から生活リズムも変わり、新しい環境で心身にストレスがかかっている人は多いでしょう。
そして5月に向けてリスクが高まるのが、5月病。やる気や気力が低下し、ひどい場合には深刻なうつ病につながることもあります。
5月病のリスクと睡眠の間にも密接な関わりがあると語るのは、精神科医の芦澤裕子先生。良質な睡眠を確保するためにできる対策に関して伺った内容を、快適な睡眠を届けるファーニチャーブランドZINUS JAPAN株式会社のリリースよりお届けします。
芦澤裕子先生 精神科医・市川メンタルクリニック 院長
日本睡眠学会認定医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、指導医。心療内科、精神科のクリニックにて精神障害、睡眠障害などの治療にあたる。「GOOD SLEEP BOOK 365日ぐっすり快適な眠りのむかえ方」(翔泳社)監修。市川メンタルクリニック
「5月病」は睡眠の質とも密接な関わりがある
5月病とは、抑うつ症状を呈する状態のこと。医学的には「適応障害」「うつ病」と診断されることが多いです。
新生活の環境の変化による精神的、ないしは身体的なストレスや疲労のために脳がうまく働かず、精神的に不安定になったり、ぼんやりとしてしまったり、無気力になるなどの症状が出ることがあります。
ネガティブなストレスに限らず、志望通りの進学・異動・昇進などのポジティブな変化によっても起こることがあります。
環境の変化をはじめとする明らかなストレス要因に起因し、そのことについて思い詰めて、夜きちんと眠れずに心身が疲労していくという悪循環が「5月病」につながることも考えられます。
睡眠の量や質が低下すると、どんなデメリットがある?
睡眠の量や質が落ちると、身体組織の疲労回復に支障をきたします。
精神的なコンディションを司る「自律神経」や「脳神経」も、細胞ひとつひとつからできています。従って、栄養や酸素が細胞に行き渡っている状態を作ることが重要なのですが、睡眠がきちんととれないと、これらが上手に機能しなくなるリスクがあります。
睡眠の質を高めるための睡眠習慣
起床時刻を一定にする
人間の概日リズム(生体リズム)は約25時間と、1日の24時間より1時間ほど長いのです。この差を修正するためには、朝の起床時刻を一定にし、24時間周期にリセットしましょう。
朝起きたら太陽の光を浴びる
朝、太陽の光を浴びましょう。
午前中に光を一定時間浴びることによって、自律神経や脳神経を正常化するのに役立つホルモン、セロトニンの正常な分泌にも役立ちます。
ぬるめの半身浴をする
身体の内部の温度(深部体温)が下がるときに副交感神経が優位になり、入眠しやすくなります。
眠るタイミングで深部体温の低下を下げるには、春夏の暖かい季節は1時間前までに、湯船で38度~40度のぬるめの半身浴で入浴を。
20分ほどゆったり浸かりましょう。
眠る1時間前からはパソコンやスマートフォンの液晶画面(ブルーライト)は見ない
ブルーライトは、光の脳への刺激によって睡眠相(睡眠リズム)を崩してしまいます。本来は夕方以降にブルーライトを浴びないほうが理想とも言われます。
また、眠る前のネットサーフィンも、見ていることに興味を持ってしまうことで交感神経が優位になり、入眠の際に優位になるべき副交感神経がうまく作用せず、なかなか寝付けなくなってしまいます。
睡眠の質を高めるための栄養と食事
美味しいものを食べることでも“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが分泌されるので、適度であれば好きなものを楽しむことはおすすめです。
しかし、栄養が偏ったり、糖質・脂質など胃腸に負担がかかるものを過剰に摂ることは、長期的には血液中のコレステロールを増やしてしまったり腸内環境を乱すなど、メンタルヘルスにも良くない影響を及ぼす可能性もあるので注意しましょう。
睡眠の質をよくする栄養素
睡眠の質の改善に必要な栄養素は、たとえば以下です。
- 神経伝達物質を作るタンパク質
- セロトニンの合成に不可欠なビタミンB6
- 脳神経の正常な働きを助けてくれるビタミンB12
- 神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)の原料トリプトファン
- ドーパミンを作るのに必須といわれる鉄
- ストレスを和らげ、興奮した神経を落ち着かせるGABA
- 体の末端部分の血行量を増やして深部体温を冷やすグリシン
睡眠の質を上げてくれる食品
肉や魚は主菜にきちんと取り入れたうえで、以下を意識するとよいでしょう。
- ビタミンB12豊富なしじみやあさりなどの貝類
- グリシン豊富なエビやウニ
- トリプトファン豊富な豆腐や納豆
- GABAが豊富な発芽玄米
また、睡眠の質の改善に役立つ栄養素を含むといわれるユーグレナは、59種類もの栄養素を含み、その中にはビタミンB6、ビタミンB12、トリプトファン、鉄、GABA、グリシンに加え、ユーグレナ特有のβグルカンである「パラミロン」も含まれています。
ユーグレナ粉末1,000mgおよびユーグレナ粉末の入っていないプラセボ粉末を12週間摂取した臨床試験において、主観的な睡眠への満足度有意な向上が見られたという検証結果もあります。
よい睡眠のために、控えた方がいい食べ物、飲み物
- お酒
- カフェイン(夜眠る5時間前までしか飲まない)
飲酒は睡眠の質を下げる要因に直結します。また、アルコールの利尿作用で就寝中に目を醒ませてしまうことも睡眠の質の低下につながります。
神経を覚醒させるカフェインも、就寝時間の5時間前までと決めるのがおすすめ。
睡眠の質を高める運動のタイミングと強度
運動すると身体に乳酸などの物質が作られ、身体が疲労回復しようとするために入眠しやすくなります。
また、運動をすることで全身の血流、ないしは脳の血流もよくなり、思考の処理などが行われやすくなることも。
運動習慣を持つことで、中期的に体力がつくので仕事の集中力・意欲の維持にもつながり、仕事への自信喪失などに起因する5月病リスクも軽減できるかもしれません。
午前中に屋外で15分以上散歩するなど、ほんのり汗をかく程度の運動が理想的。
寝室環境も大切。入眠しやすく、肉体の疲労がしっかり取れる寝室か
ベッドマットの選び方
ベッドマットやふとんに関しては、その人の体型や寝る姿勢により適した硬さや形状があります。
仰向けで眠るのが血行を加味すると理想的ですが、寝返りのしやすさも重要です。
寝具に横になってみて、寝返りしやすい、仰向きで寝たときに体の特定箇所に不自然な圧力が掛からない、入眠時の自分の寝姿勢で心地が良いなどをチェックしたうえで選ぶようにしましょう。
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ベッドメーカーのショールームで体圧をチェック
ベッドメーカーのショールームなどにある、自分の身体がベッドマットレスの上でどのように分布しているかが可視化できる体圧分散測定器などを試してみてください。
自分の体圧が不自然にかかる(=身体の特定箇所だけが深く沈んでしまい、不自然に荷重がかかる、などがおこっている)寝具は避け、不快感がないものを選びましょう。
枕の選び方
枕は“寝返りのうちやすさ”が選ぶ基準。
寝返りは質の高い睡眠には不可欠なものです。同じ姿勢のまま固定されてしまうと血流が悪くなってしまいますが、寝返りを打つことで身体の血行が促進されます。
また、寝具の中の温度・湿度を調節するというメリットも。
理想の枕は、横になったときにおでこ、鼻、鎖骨を結ぶラインが一直線になる高さであること。多くの人が想像する枕より平たく低い枕のほうが寝返りを妨げません。
眠る空間について
照明は真っ暗ではなく、ちょっとカーテンから光が透けるくらいの暗さが理想的です。
シーツや枕カバーなどの寝具は、目で見て安らぐ薄い色の、ブルー系かグリーン系の綿や、シルクなどの天然素材のものを使用しましょう。
吸汗性があまり高くないシーツだと、かいた汗が吸収されず、不快感に繋がり睡眠の質を下げてしまいます。
寝付けないとき入眠しやすくするテクニック
眠る前も交感神経が優位なままだとなかなか寝付けません。副交感を優位にして入眠を促してくれるテクニックをご紹介します。
自律神経を整える耳マッサージ
耳まわりを刺激することで副交感神経が優位になることを助けてくれます。
- 耳全体を上下から指で挟む
- 耳のふちの真ん中の位置をつまんで、外側に引っ張る
- 耳の上側をつまんで上に引っ張り、同じように耳たぶをはさんで下に引っ張る
数回繰り返してみましょう。
眠る前後のアロマテラピー(芳香療法)も有効
香りは脳に直接的な刺激を与えてくれるといわれ、睡眠の質の向上にも役立ちます。
アロマディフューザーやアロマストーンで使用したり、ティッシュに1~2滴を垂らして枕のそばに置くのでもOK。天然香料のものを選んでください。
- 眠る前におすすめの香り:ゼラニウム・ラベンダーの安心感のある甘さを感じる香り
- 目覚めた後におすすめの香り:ユーカリ・ミントなどの清々しい清涼感ある香りや、ティーツリーのような爽快な苦みの香り。朝、目覚めた後のスッキリ感を増長してくれることが期待できます。
フランキンセンスのような澄んだ香りやシダーウッドなどの深い森林をイメージさせる香りも気持ちを静める効果があります。
オレンジ・ベルガモットの甘く爽やかな香りも、緊張やストレスを開放し、リフレッシュさせてくれるといわれています。
最近は芳香療法に着目したスキンケアブランドなども登場しているので、睡眠前後のスキンケアアイテムで心地よい香りを取り入れることも自律神経を整える一助となります。
精神の安定を保つ対策として一番有効なこととは
精神の安定を保つ対策としては、実は“信頼する人に話を聞いてもらう”のがダントツでおすすめです。
孤独感を感じると抑うつ症状が悪化しやすいといわれます。他にも、人との交流が苦手という人は趣味に没頭する、寝る、大声を出すなどもストレス発散になります。
生活リズムを一定に保ち、健康的な生活を送ること(3食を一定の時間に摂り、起床時刻を一定にし、自分に合った十分な睡眠時間を取る、継続できる運動を規則的に続ける)に勝るものはないと心得てください。
メンタル悪化で起き上がれなくなったら病院へ
なんとか仕事ができている場合は様子を見て、起床時から気力が湧かず、布団に身体が張り付いてしまって起き上がれないくらいの場合は早めに精神科を受診しましょう。
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<Edit:編集部>
- 寝る前のスマホいじり、止める方法は?睡眠専門家がアドバイス
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